動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第4回 自院の現状把握
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
第1回~第3回では、ワークライフバランスの重要性について
人医療の世界の労務の歴史などを見ながら書いてきました。
そして前回のブログの最後では
「できることから」ワークライフバランスに着手してほしい
ということを書きました。
誤解を恐れずにいうならば、
動物病院の実態と労働関係法令とがマッチしない面は
少なからずあると私は考えています。
- ・病院の営業時間自体が長いので労働時間を短縮するのが難しい
- ・シフト制を組むほど人件費に余裕はない
- ・仕事と勉強の境目が曖昧。そして勉強しないと成長できない。
- ・困っている動物をほうっておくわけはいかない(応召義務)
などの現状を踏まえれば、たとえば
「1日8時間超えたらすべて残業!残業代は1.25をかけて…」
「カンファや勉強会もすべて業務!残業代を出しましょう。」
「労働時間を守るため、時間外の来院は追い返してください!」
と杓子定規に考えて、それをすぐに実行に移すことは
少し難しいというのが現実だと思います。
また、人の医療の世界では例えば
「補助職を雇用してスタッフの負担を軽減すれば、
もらえる診療報酬の割合が増える」など、
労働環境の改善のために国をあげて動き出していますが、
残念ながら動物病院にはそのような支援もありませんので、
補助職を雇えばそれはそのまま人件費に跳ね返りますし、
病院存続のために国や自治体が力を貸してくれるわけでもありません。
スタッフのワークライフバランスを整えるために、
病院自体が倒産してしまっては元も子もないですよね。
とはいえ、前回のブログで触れた通り、
スタッフが疲弊しているのを放置すると
人が定着しなくなり、
医療の質が低下して動物と飼主様に迷惑がかかり、
結果として経営もうまくいかなくなります。
従業員から訴えられるということも
この時代、決して他人事ではありません。
なので、ぜひ「できることから」
ワークライフバランスに着手してみましょう。
<ワークライフバランス改善のためのステップ>
さて、
「『できることから着手しよう』と言われても
何から着手していいかわからない!」
という院長先生も多いと思います。
そこでこのブログでは、
スタッフのワークライフバランスを改善するための
ステップの例を紹介したいと思います。
これは実際に人医療の世界で使われている手法ですので
労務上の共通点が多い動物病院でも(というかどの業界でも)
ほぼそのまま使えるものです。
【ワークライフバランス改善のための7ステップ】
- 1 トップが現状を把握する
- 2 方針表明
- 3 チームづくり
- 4 現状分析
- 5 目標設定
- 6 ルール作成と実施
- 7 評価・改善
<1.トップが現状把握をする>
現状把握とは、労働関係法令等の基準を
自院がどれだけ遵守できているかということをはじめ、
労務管理に関して、できていることとできていないことを
把握することです。
実は日本医師会のガイドラインでは
スタッフによるチームを作成して
そのチームで職場の現状を把握すると案内されているのですが、
私は、まずトップである院長先生や幹部社員など限られた人間で
現状を把握されることをお勧めしています。
というのも、現状把握の過程では、
病院の労働環境的に未整備な部分や
場合によっては法律の基準を満たしていない点、
つまりマイナス面が明らかになります。
スタッフも含めて自院の現状を把握することは
もちろんとても大切なことなのですが、
現実問題として、
それまで全く労務等について関心や知識がなかったスタッフに、
急に法律上のルールと自院の状況と照らし合わせる作業をさせてしまうと、
「うちの病院は法律を守っていなかったの!?」
「こんな病院にいて大丈夫か」
「法律通りだと、私の残業代はいくらになるの…」
と不安や不満だけを煽る結果になりがちなのです。
こうなるとワークライフバランスを整えるどころか
病院(院長)とスタッフとの間に
修復不可能な大きな溝ができてしまいます。
それを避けるためにも、
まずは院長先生や幹部社員で現状を把握し、
・どこから着手するか
・一般スタッフにはどのように周知するか
など、しっかりと戦略を練ってから
全体に展開すべきだと私は考えています。
この現状把握の段階で
顧問契約されている税理士・社労士などに
入ってもらってもいいと思います。
ではどうやって現状把握をすればいいのでしょうか。
今回は人医療の世界で使われている
分析ツールをご紹介します。
これは労働環境に関する合計35項目の
チェック項目に回答する形で
自院の労働環境の現状把握をするツールです。
日本医師会が発行している
「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
に掲載されています。
細かい点数づけまでするのが面倒であれば、
まずは「できている」or「できていない」
を把握するだけでも十分です。
このツールはネット上に公開されており、
下記のリンクの4~22ページに解説も含めて掲載されていますので、
ダウンロードや印刷してお使いいただければと思います。
(上記画像のチェックリストは6、7ページにあります)
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
お忙しい院長先生が、
労働関係法令のスミからスミまで学ばれることは
現実的ではありません。
かといって、院内に人事専門の部門を設けたり
社労士などの専門家を雇う余裕はないという
病院も多いと思います。
なので、労働環境についての要点をかいつまんだ
このようなフリーツールをぜひ活用いただきたいと思います。
少し長くなりましたので、
「2 方針表明」以降のステップについては
次回のブログで書きたいと思います。
引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
<参考リンク>
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
上記で触れたツールです。
労働関係法令のキモがかいつまんで
紹介されているので、ざっと読むだけでも勉強になります。
厚生労働省「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)」
医療機関の勤務環境改善の事例などを参照できます。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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