動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第3回 人医療の労務の歴史
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<人の医療業界の勤務環境改善の歴史>
前回のブログでは
ワークライフバランスを整えることは
単なるスタッフの待遇改善にとどまらず
スタッフ、飼主様、病院の3者が
WIN-WIN-WINとなる「好循環」に
つながるということを書きました。
一方でワークライフバランスを軽視すると
結果として経営の悪化につながる「悪循環」
が発生するということも書きました。
そしてその「悪循環」とは
人医療の世界がすでに経験した
苦い過去でもあるのです。
先日、受講した「医療労務コンサルタント研修」の中では、
人の医療の世界の勤務環境改善の歴史についても学びました。
2000年 を超えたあたりから
人の医療の世界でも過酷な労働環境が常態化して
それが医師や看護師の疲弊につながり、
- ・離職
- ・メンタル不調や過労死・自殺
- ・それらに伴う訴訟
- ・医療ミス
などが急増した時期がありました。
(「ありました」と過去形で書きましたが、
現在もそれらの問題が全て解消されたわけではありません)
特に平成15年から平成20年の間には
過労死や自殺で亡くなった医療関係者の遺族が
病院を訴え、損害賠償額が7000万円を超えるような
判決が複数出て、大きな社会問題にもなりました。
<参考 医療機関の労働事件判例>
そのような流れを受けて、平成23年頃から、
国(厚労省)、都道府県、医師会、看護協会などが
本腰を入れて医療現場の勤務環境改善に取り組み、
少しずつ改善してきたという経緯があるのです。
このシリーズの第1回のブログでも触れた通り、
動物病院と人医療の業界は
人事労務的にも共通点が非常に多いです。
ということは、人医療の業界がたどった道を
今後動物病院業界もたどる可能性は大いにあるのです。
もちろん 「業界」という大きな話だけではなく、
当事者の病院にとって致命傷にもつながります。
過労死裁判の判例も決して他人事ではありません。
医療事故の訴訟よりも、
スタッフ(場合によってはそのご遺族)からの訴訟の方が、
動物病院にとっては遥かに大きなリスクだといって
過言ではないでしょう。
ワークライフバランスを整えることは
スタッフに向けたサービスではなく
自院のリスクヘッジにほかならないのです。
<できることからはじめるというスタンス>
ここまで動物病院にとってのワークライフバランス改善の重要性を
「好循環」と「悪循環」の視点から切々と訴えてきましたが、
多くの動物病院の院長先生は私に言われるまでもなく
「そりゃワークライフバランスを整えるに越したことはないよ」
とお考えだと思います。
しかしながら
- ・情報ギャップ(何をすべきかわからない)
- ・実行力ギャップ(人事労務に取り組む時間や人手が足りない)
に悩まれているケースが多いのではないでしょうか。
また院長先生からよくお伺いする話として、
身近な弁護士や社労士や行政に相談したところ、
到底実現できないような労働時間の短縮を指示されたり
過度に労働者目線にかたよった待遇改善を指示されたという
話があります。
そんなこともあり
「ワークライフバランス」の重要性はわかりつつも
なかなか着手できていないという院長先生も
多いのではないでしょうか。
私がコンサルティングの現場でよくお話しすることは
「できることからやりましょう」ということです。
・就業規則を作るのが難しければ雇用契約書から始めればいい。
・きちんとした評価制度を整えるのが難しければ
定期的に面談をして院長先生の考えを伝えてあげたり
悩みを聞いてあげるだけでもいい。
・労働時間をいきなり減らすのが難しければ
業務のムダをスタッフ全員で探すことから始めてもいい。
気休めに聞こえるかもしれませんが、
スタッフはロボットではなく心のある人間ですので、
労働時間の長短や制度の有無だけではなく、
トップの姿勢や態度次第でモチベーションや帰属意識が
大きく変化するものです。
(ご自身が勤務医だったころを思い起こされると
スタッフの気持ちに少し近づけるかもしれません)
なのでぜひ、ワークライフバランスを難しく考えず、
「できること」をひとつでも探し、
行動に移していただければと思います。
また、私のような動物病院経営のサポートをする立場の者も
法律的にOKかNGかという杓子定規なアドバイスではなく、
その職場に応じた落としどころを見つけることを
肝に銘じていきたいと思います。
次回以降のブログでは
そのための具体的な手順や取組事例などについて
紹介していきたいと思います。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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