動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第6回 動物病院の人事評価制度
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
前回まで、ワークライフバランスの重要性や
実際に動物病院でワークライフバランス改善を
進める際のステップ等について書いてきました。
今回は動物病院のワークライフバランスを改善するうえで
重要となる「人事評価制度」について書きたいと思います。
<人事評価制度ってどうして必要なの?>
私自身、前職のサスティナコンサルティング在職時に
人事評価制度作成のプロジェクトを起ち上げ
多くの動物病院の人事評価制度作成に携わらせていただく中で
動物病院における人事評価制度作成のニーズの高まりを
肌で実感してきました。
そもそも人事評価制度ってどうして必要なのでしょうか?
動物病院のスタッフさんのお話を
直接聞く機会が多いのですが、
その中で不満として挙がることが多いのが、
「自分がどう評価されているかよくわからない」
「自分の何が良くて何が悪いのかをちゃんと聞きたい」
という意見です。
「お金や休みがあればそれで満足だ」
というスタッフは実際には少なく、
自分がどう評価されているかを知りたい
と考えるのは人として当然の欲求(承認欲求)
だと思います。
人事評価制度は
それを満たすためのものでもあるのです。
「人事評価制度」と聞くと、
なんだか大袈裟な感じを受ける方もいると思いますし、
なかには、「人に点数をつけるみたいで抵抗がある」と
お考えの方もいると思いますが、
- ・病院の方向性をスタッフに示すためのもの
- ・スタッフに評価をフィードバックするためのもの
- ・主観的になりがちな評価を少しでも客観的にするもの
- ・昇進や昇給を公平に行うためのもの
と、目的を整理すると頭がクリアになると思います。
そして上記の目的を満たすものであれば、
評価項目数が何十項目もあったり、
複雑な昇格体系があるような
「かっこいい」人事評価制度である必要は
まったくありません。
そのような人事評価制度の目的を整理したうえで、
今回のブログでは、
私が過去に作成をお手伝いした実例なども紹介しながら
人事評価制度の導入について考えてみたいと思います。
(実例は個人情報保護等のため一部改変しています)
<人事評価制度ってどんなもの?>
「人事評価制度」というと、
各スタッフに点数をつけるような制度を
思い浮かべる方も多いと思います。
それももちろん人事評価制度の一部なのですが、
人事評価制度はそれだけではありません。
上述の「点数をつける」という部分は、
・「評価制度」
といい、そこに
・「昇進昇格制度」
・「賃金制度」
が加わってそれぞれが相互に関連したものを
「人事評価制度」と呼ぶのが一般的です。
・評価制度⇒スタッフをどんな項目によって評価するか
病院としての方針を示す意味合いもある
・昇進昇格制度⇒役職やその要件(どんな人がその等級になるか)
役職や等級による責任と権限を明確にするために作る
・賃金制度⇒評価や役職に応じてどのように賃金や手当を支払うか
評価や昇進昇格を賃金や手当に反映させる
<評価制度とは>
人事評価制度の中で、最もイメージしやすいのが
この「評価制度(評価項目)」の部分だと思います。
このように各スタッフを評価する項目を設定し、
定期的に評価(点数付け)を実施します。
項目数や項目内容は病院によって様々ですし、
職種ごとに評価項目を変えたり、
点数のウエイトづけを変える場合もあります。
また「仕事の質」とか「効率性」などと
項目名を決めるだけでは
スタッフは具体的にどのように頑張ればいいか
わかりませんので、各項目について
具体的な評価基準を設定することが必要です。
この評価基準ももちろん動物病院によって様々です。
この評価基準をつくる作業は
まさに病院が何を大切にしているか
何をスタッフに求めているかを
明文化する作業にほかなりません。
下記の目的を再認識しながら
院長先生ご自身のお考えを
評価制度に落とし込んでいくことが大切です。
・病院が求めていることをスタッフに明示し、
スタッフが目指す方向を統一する。
・定期的に評価をフィードバックすることで
各スタッフの成長を促し、モチベーションアップにもつなげる。
・評価結果を昇進や昇給と連動させることで
貢献度の高い人が報われる公平な仕組みをつくる。
(「昇給して当たり前」「ボーナスもらえて当たり前」
という意識を排除する)
作成のポイントとしては、難しく考えず、
日々スタッフに口酸っぱく言っていることや
ご自身が獣医師として大切にされていることを
表現すれば納得いくものに近づくと思います。
また評価項目を作るのがゴールではなくて、
それを使って実際にスタッフを評価することが
大切ですので、あまり複雑にしないことを
おすすめしています。
項目数が多すぎたり、ルールが複雑すぎると
結局評価すること自体が面倒になってしまい
使わなくなってしまうということもあるので注意しましょう。
<昇進昇格制度とは>
このように役職や等級ごとに、
要件を定めていくことで昇進昇格制度が完成します。
上図はシンプルな例ですが、
各職名ごとの責任や権限を細かく決定する場合もあります。
評価の高いスタッフが
役職的にも昇格して責任と権限を与えられ
その病院のスタッフとしてのモデルケース
になるということを目的としています。
昇進昇格制度が整えば、
スタッフごとの立場に応じて期待することを
より明確に伝えられますし、
スタッフも将来のビジョンを描きやすくなります。
<賃金制度>
最後は賃金制度です。
賃金制度はどの立場の人がどれくらい賃金をもらえるか、
ということを定めたルールです。
1年ごとになんとなく昇給させている
という動物病院も多いと思いますが、
それだと「昇給して当たり前」という
意識になり、成長が止まってしまいがちです。
下記は賃金制度の一例ですが、
役職が上がるのに連動して賃金が上がる
という仕組みを取っています。
定期昇給・年齢昇給的な要素と、
成果昇給的な要素のバランスをとりながら
作成していくこととなりますが、
プロフェッショナル的要素が強い
動物病院という職場では
成果昇給的な要素を高めに設定した方が
実態にマッチすることが多いです。
もっと複雑な号俸表を作成したりするケースもありますが、
こちらも作成後にちゃんと運用していけるよう
できるだけシンプルなわかりやすい制度にすることを
おすすめしています。
また、人件費として使える金額には限界がありますので
将来の昇給をシミュレーションしながら、
現実的に支払える昇給額を探していくことも大切です。
<「できることから」という姿勢で>
ここまで、評価制度、昇進昇格制度、賃金制度
について解説してきましたが、
これにより、狙っているのは
スタッフの心が以下のように動くことです。
「役職が上がるとこんなに給料が上がるのか。
主任は手当もつくんだ。よし!頑張って上の役職に上がろう」
↓
「主任獣医師に昇格するためには昇格制度の要件
を満たさなければならないな。認定医の勉強も頑張って、
飼主様とのコミュニケーションも大切にしよう。」
↓
「昇格のためには当然評価も高くないといけない。
うちの病院の評価項目は…。なるほど後輩指導も
評価基準なのか。もう少し頑張ってみるか。」
このように病院から何を求められていて、
それに答えるとどういうメリットがあるかということが
明確になることにより、
モチベーションにつながり
より病院が求めるスタッフへと成長してくれる
ことを意図しています。
またこれは「逆転の発想」のお話ですが、
人事評価制度を導入するもう一つのメリットとして
病院の方向性とは合わない人と
上手にお別れをしやすくなる、という点があります。
たとえば、このブログで紹介したような
人事評価制度を運用している動物病院に
「自分はただ動物と触れ合っていたいから
飼主様対応はできるだけしたくない」
という動物看護師がいたとします。
その看護師さんは評価も低くなり、
昇格もできなくなり、結果として
待遇もあまりよくなりません。
そこでその看護師さんが
「この病院は合わない」と判断して
病院を去るのであれば、
それはそれで一つのミスマッチがなくなるわけですので、
お互いにとってよいことだと言っていいと思います。
(もちろんこの看護師さんが仕事と向き合い
飼主様対応を頑張ってくれるようになればベストなのですが)
さらに言えば、採用試験などのときに
自社の人事評価制度を見せて
病院が求めているものを伝えるケースもあります。
その時点で
「自分の考えに合っている」という人は残るでしょうし、
「こんな病院ではやってられない」という人は去るでしょう。
人事評価制度はそのようにミスマッチの解消にも
一役買うのです。
繰り返しになりますが、人事評価制度とは
- ・病院の方向性をスタッフに示すためのもの
- ・スタッフに評価をフィードバックするためのもの
- ・主観的になりがちな評価を少しでも客観的にするもの
- ・昇進や昇給を公平に行うためのもの
です。
まずは簡単なものからでも結構ですし、
最初は評価項目のみで、
昇進昇格制度や賃金制度と関連付けるのは
後回しでも全然構いませんので、
院長先生の考えをしっかりと反映した
人事評価制度を作っていかれることが、
結果としてスタッフのワークライフバランス改善に
つながると思います。
ぜひチャレンジしてみてください。
下記に関連書籍なども紹介いたしますので、ご参照ください。
次回以降のブログでは、
動物病院が知っておきたい補助金や助成金や
メンタルヘルスについても紹介していきます。
<おすすめの関連書籍>
◆山元浩二『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』
人事評価制度の重要性とその導入の方法について
経営者目線でコンパクトにまとめられている書籍。
法律的知識がなくても読みやすいです。
◆有限会社人事・労務『社員がよろこぶ会社のルール・規定集101』
労基法通りのルールだけではなく
たとえば子どもの学校行事のときに休みを取れる規定や
朝礼・終礼のルール作りなど、
書名の通り101個のアイディアが載っています。
すぐに導入できるようなものもありますし、
パラパラと見るだけでも
「こんなルールがある会社もあるんだ」という頭の体操になります。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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