動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第8回 動物病院がメンタルヘルスに取り組む理由
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<医療業界とメンタルヘルス>
ワークライフバランスについて語るときに
避けて通れないのがメンタルヘルスの話です。
今年も電通や関西電力など
大企業の過労死自殺がニュースとなり、
世間や行政の関心度もますます高まっています。
また2015年12月から、
50名を超える職場における
年に1度の「ストレスチェック」が義務化されました。
(ブログの最後に関連リンクがあります)
そのような社会的関心の高まりもあってか、
先日参加した医療労務コンサルタント研修の中でも
メンタルヘルスに関する話に
多くの時間が割かれていました。
また「メンタルヘルス」というテーマに特化した社労士向けの研修も
随分と頻繁に開催されるようになりました。
そもそも現在の医療業界において
ワークライフバランスが声高に叫ばれるようになったのも、
医師や看護師が過労等で心身を病み、
職場を去ってしまうケースや、
自殺を選んでしまうケースが多く、
それをなんとかしなければならないという
流れに端を発しているということです。
2008年の日本医師会の調査によると
医師の約12人に1人が「抑うつ状態」であり、
医師の約50人に1人が「うつ病」であるという結果がでました。
また
- ・21%が不健康であると回答した
- ・9%が興味の減退がみられた
- ・7%に中途覚醒がみられた
- ・6%にエネルギーレベルの低下の自覚があった
- ・2%に集中力や決断力の低下がみられた
など、一定数の医師がメンタル不調に典型的な症状を
発現していることがわかりました。
もちろんメンタル不調は職場や仕事だけが原因とは限らず、
プライベートの出来事が関係していることもありますが、
特に医師や看護師の場合は、
- ・慢性的な過労と睡眠不足
- ・責任の大きい仕事
- ・患者からのクレームやプレッシャー
などの業務特性からメンタル不調が発生するケースが多く
似たような業務特性を抱える動物病院業界としても、
その事実を決して無視できるものでありません。
ということで今回と次回の2回にわたって
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】の締めくくりとして
動物病院スタッフのメンタルヘルスについて書きたいと思います。
<経営の視点からメンタルヘルス対策を考える>
まずどうして動物病院が
スタッフのメンタルヘルスに取り組む必要があるのか、
ということを経営の視点から整理してみます。
1 「リスク管理」の観点
電通や関西電力の事件を見ていても、
スタッフのメンタル不調は企業にとっての
リスクであることは明らかです。
スタッフのメンタル不調は、
- ・訴訟
- ・労災
- ・自殺
- ・飼主様からの評判の低下
- ・(求職者からの評判が悪くなることによる)求人の困難化
などにつながる可能性がある「労務トラブル」だと認識して、
しっかりと対応、予防する必要があります。
2 「損失回避」の観点
メンタル不調でスタッフが休業・欠勤することによる
- ・労働力の低下やその穴埋めにかかるコスト
- ・メンタル不調で業務にあたったことによるミス
- ・職場の雰囲気の悪化
- ・同僚への影響(メンタル不調は連鎖します)
など…
これらは動物病院にとって「損失」にほかなりません。
このような損失を回避するためにも
メンタル不調を予防する
(もしくは発生したときに適切に対応する)
ことが大切なのです。
3 「コンプライアンス」の観点
スタッフのメンタル不調の原因が職場にあるとすれば、
例えば労働基準監督署が調査に入って
労働環境の改善を指示されるなど
コンプライアンス(法令順守)上の問題にも
発展しかねません。
動物病院の経営の視点から考えたときに
スタッフのメンタルヘルス対策に取り組む理由は
ズバリ以上の3点です。
と、こういう書き方をすると
「メンタルヘルス対策はスタッフのためにすることなのに
経営サイドの話ばかりで随分ドライだなあ」
と感じた方もいらっしゃるでしょう。
それを承知であえてこのような書き方をしたのは、
スタッフのメンタルヘルスに取り組むことは
決してスタッフのためだけではなく、
動物病院(経営サイド)のためでもあるのだということを
ご理解いただきたかったからです。
というのも、
これは私が動物病院経営のサポートの現場でしばしば
痛感していることなのですが、
「スタッフのため」という利他の精神だけでは
多くのケースで壁にぶちあたるときがくるのです。
「スタッフのためにあんなに労働環境を整えたのに、
結局辞められてしまって損をした気分だ…」
「スタッフのためにあんなにお金を使ったのに、
どうして感謝ひとつしてくれないのか…。むなしい…。」
というご経験を過去にされた院長先生も多いと思います。
もちろん「スタッフのために」という気持ちは
美しく大切なことではありますが、
それに対して見返りを求めすぎると、
期待はずれに終わってしまうことが少なくありません。
なぜなら経営者と従業員では絶対的に視点が違うからです。
ということでメンタルヘルス対策について考える際にも
「スタッフのためにやるのだ」というだけではなく、
上述したような「動物病院の経営のために必要なのだ」
という視点を忘れないようにしてください。
それこそが実効性のある対策にするための一番のポイントです。
そしてそれが結果としてスタッフのためになり、
スタッフのワークライフバランス改善につながるのです。
次回は動物病院がメンタルヘルス対策に取り組む際に
決めておくべき規定等を紹介していきたいと思います。
<おすすめ関連書籍・参考リンク>
◆亀田高志
『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』
著者は企業向けや社会保険労務士等の専門家向けに
メンタルヘルスに関する講演等を行っている方です。
メンタルヘルス対策のポイントや規程の例なども
掲載されており、読みやすい書籍です。
◆電通の事件に関して産業医が述べた記事
ハーバーオンライン
『現役産業医が見た電通事件、3つの問題点――
「残業100時間超えだけが問題ではない」』
◆関西電力事件のニュース
ハフィントンポスト日本版
『【高浜原発】自殺した関電社員を労災認定
審査対応で月200時間残業』
◆2015年から50人以上の職場に義務付けられたストレスチェックについて
厚生労働省『ストレスチェック制度導入マニュアル』
(リンク先からダウンロードも可能です)
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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