動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
このブログでは、当社の取り組みや代表の考えなどを発信していきます。
少しでも皆様の参考としていただけるよう、
できる限り具体的な情報発信を心がけています。
※紹介している事例等はすべて会員病院様等の許可を得たものです。
ブログ更新情報をメールで受け取りたい方は
お問合せフォームから「ブログ更新通知希望」をお知らせください。
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第9回 メンタルヘルスに取り組む方法
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
9回にわたってお届けしてきた
【シリーズ】動物病院のワークライフバランスも
今回が最終回となりました。
最後は、動物病院がスタッフの
メンタルヘルス対策に取り組む際の
具体的な方法やルールの例などを
紹介したいと思います。
メンタル不調対応で大切なのは、
メンタル不調者が発生したときの流れを
きちんと決めておくことです。
「え、そもそもメンタル不調者が出ないように
予防することが大切なんじゃないの?」
と思われる方も多いと思います。
もちろんメンタル不調者が発生しないように
残業時間の短縮化をしたり、
定期的に面談をして悩みを聞いてあげたり、
ということも大切です。
しかし動物病院側がどれだけ手を尽くしたところで
メンタル不調が発生するときは発生します。
例えば仕事の悩みが何もなくても、
家庭の悩みが原因でスタッフがメンタル不調に
なることだってあるのです。
これは動物病院に限らず、
あらゆる企業が抱えているリスクです。
どれだけ「ホワイト」な会社でも
スタッフのメンタル不調のリスクを
ゼロにすることなどできません。
ですから、スタッフのメンタル不調は
いつ発生してもおかしくないリスクだと認識し、
発生した時のために対応方法を決めておくことが
何よりも大切なのです。
<メンタル不調者が発生したとき
のために決めておきたいこと>
ここからは、メンタル不調が発生した際の対応として、
段階別に「決めておくべきこと」を紹介します。
1 メンタル不調になったスタッフを治療につなげる段階
<決めておくべきこと>
(1)誰が初期対応をするか
これは規定等で明示しなくても構いませんが、
対応するのが院長なのか?他の担当者なのか?
はあらかじめ決めておいた方がよいでしょう。
(2)どこの病院にかからせるか
【規定の具体例】
「会社が必要と判断した場合、
会社の指定する医師による診察を
スタッフに命じることができる。」
(3)診断書を提出させる条件
【規定の具体例】
「連続5日以上、病気により欠勤する場合には
その理由を記した主治医による診断書を
提出しなければならない。」
人事トラブルはなんでもそうですが、
「初動が肝心」です。
本人から申告があった場合、
無断欠勤が続いた場合、
見ていて明らかに言動がおかしい場合 など、
スタッフのメンタル不調が発覚するきっかけは様々です。
そんなときに誰が本人から話を聞き、
病院の受診を指示し、
どれくらい休みが続いたら
診断書を提出させるか。
これが動物病院内で決まっていないと、
メンタル不調者が放置されたまま時間が経過し、
症状はどんどん悪化し、職場も浮き足立ち、
「リスク管理」「損失回避」「コンプライアンス」
の観点で、最悪の方向に進んでしまうことになります。
逆に迅速に対応ができれば、
リスクや損失は最小限にとどめられ
きちんと療養して早期に職場復帰できる可能性もあります。
私自身もメンタル不調のスタッフに対応した
ケースは何度もありますが、
渋る本人を説得して病院に通院させ
その後元気に職場復帰してくれたケースもあります。
初動対応に関することは
しっかりと決めておきたいところです。
2 治療開始後から療養、休職までの段階
<決めておくべきこと>
(1)休職の条件
【規定の具体例】
「欠勤が連続・断続を問わずに30日を超えた場合、
または通常の労務が提供できず回復に一定期間を
要すると病院が判断した場合に、休職を命じることがある」
このように、休職の条件を定めておくことで
ダラダラと欠勤している状態を続けることなく、
明確に休職へと移行できるため、本人にとっても、
動物病院側にとっても、対応がクリアになります。
明らかに症状が出ているにもかかわらず、
無理をして働かせ、症状が悪化したり
万一のことがあった場合など、
動物病院側の責任も問われかねない、
ということを忘れないようにしましょう。
3 回復し、復職を検討する段階
<決めておくべきこと>
(1)病状や回復の確認の方法
【規定の具体例】
「会社は復職後の健康配慮のため、
主治医の診断書、会社の指定する医師の診断書
等に基づいて、復職の可否や期日を検討する。」
(2)復職の可否の判断方法
【規定の具体例】
「職場復帰の可否の判断のために、会社は
関係者による復職判定委員会を設置する。
メンバーは院長、副院長、直属の上司
(当事者が獣医師なら獣医師の役職者)とする。」
「復職を検討する際の体調の目安は以下の通りとする
・復職可能である旨の診断書が出ていること
・自覚する体調が普段の8割から9割以上であること
・1日少なくとも6時間以上の勤務に耐えられること
・安全に通勤できること」
何をもって体調を確認し、
誰が何をもって復職を決定するのか等を決めます。
忘れてはいけないのは、
「復職の可否を決めるのは
精神科医ではなく、動物病院(経営者)だ」
ということです。
たとえ復職可能の診断書が出ていても
経営者として復職が難しいと判断することもありえます。
中途半端な状態での復職は、
受け入れる職場にも負担となります。
焦らずしっかりと検討して復職させましょう。
4 復職・復職後の段階
(1)復職に伴う担務変更や給与変更の可能性
【規定の具体例】
「復職する際、事情を考慮し、
職務や担当を変更することがあり、
それにともない勤務時間、給与等を
変更することがある。」
(2)復職後のルール
【規定の具体例】
「復職後、半年程度を目安として、
当事者のスタッフは定期的に医師の面談を受け、
再発の有無と業務負荷が適正であるかの
確認を受け、院長に報告する。」
メンタル不調は極めて再発が多い病気です。
仕事が原因であったとしたら、復職により
再発する可能性も非常に高いです。
そのため例えば、飼主様とのやりとりが大きな
負担になっていたのであれば電話対応は当面
させないなど、できる配慮はしてあげましょう。
(もちろん配慮に限界はありますが)
以上、メンタル不調が発生したときのために
決めておくべきことを紹介しました。
これらはもちろん就業規則等で
明確に定められればベターですが、
そこまでの余裕がないという場合は、
経営者や幹部の中で共有しておくだけでも、
何もないよりはずっとましです。
「できることからやる」という観点を大切にしてください。
<結び―動物病院のワークライフバランス―>
9回にわたって
動物病院のワークライフバランスについて
書いてきました。
動物病院の現場でスタッフの方にお話を伺うと、
多くの人が、動物が好きで若い時からこの仕事を
目指して就職したと言います。
そして「好きじゃないとやってられないですよ」
という言葉も頻繁に耳にします。
その言葉には「それだけしんどいんですよ」という
“自虐”のようなニュアンスも含まれていますが、
それよりもやはり「自分でこの仕事を選んでいるのだ」
という矜持があるからこその言葉のように思えます。
世の中にはたくさんの仕事がありますが
好きなことを仕事にして、
人からも感謝されて
世間や子どもから憧れられ、
誰にでも胸を張れる尊い仕事
というものを探すことはなかなか難しく、
そういう仕事に就けるということは
とても幸福なことだと私は思います。
本来そのように尊くて素敵な仕事である
動物病院のお仕事ですが、
ワークライフバランスが崩れるがゆえに
泣く泣くそのお仕事を離れざるを得ない人が
いるとしたら、それは辛いことです。
以前のブログで触れたような、
女性獣医師の労働力の活用の課題なども
同じ問題ですね。
ワークライフバランスの改善は
一朝一夕ではできませんが、
多くの動物病院従事者が幸せに働けるよう
少しでもできることをしていただければ、
そして私もそのために尽力してまいりたい
と考えています。
————————————————————————
今年も残すところ数時間となりました。
7月に動物病院経営パートナーEn-Jinを起ち上げ
今日まで必死で走ってまいりましたが、
多くの方のご協力・ご支援のおかげで
ここまでやってくることができました。
改めて心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
動物病院経営パートナーEn-Jinは
2017も動物病院の経営サポートに力を尽くしてまいります。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
お仕事柄、年末年始もお忙しい方が多いと思いますが、
どうぞ良いお年をお迎えください。
<おすすめ関連書籍・参考リンク>
◆亀田高志
『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』
著者は企業向けや社会保険労務士等の専門家向けに
メンタルヘルスに関する講演等を行っている方です。
メンタルヘルス対策のポイントや規程の例なども
掲載されており、読みやすい書籍です。
◆電通の事件に関して産業医が述べた記事
ハーバーオンライン
『現役産業医が見た電通事件、3つの問題点――
「残業100時間超えだけが問題ではない」』
◆関西電力事件のニュース
ハフィントンポスト日本版
『【高浜原発】自殺した関電社員を労災認定
審査対応で月200時間残業』
◆2015年から50人以上の職場に義務付けられたストレスチェックについて
厚生労働省『ストレスチェック制度導入マニュアル』
(リンク先からダウンロードも可能です)
//////////////////////////////////////////////////////
動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
//////////////////////////////////////////////////////
コメントを残す