動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第5回 PDCAサイクルを回そう
カテゴリ: ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
前回は動物病院のトップが労働環境の現状を
把握するためのツールを紹介しました。
リンク先から無料でダウンロードできますので、
ぜひご活用ください。
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
今回は「2 方針表明」以降のステップについて
簡単に解説していきたいと思います。
<2 方針表明>
トップが現状を把握したら次は方針表明です。
方針といっても難しく考える必要はありません。
・ワークライフバランスを改善していきたいということ
・スタッフのワークライフバランス改善は
医療の質の改善につながり、
動物や飼主様のためにもなるということ
・そのためにスタッフにも協力をお願いしたいということ
おおまかには以上の内容をスタッフに伝えれば十分です。
ここで大切なのは、方針の細かい内容ではなく、
「トップ自らが表明する」ということです。
これを他のスタッフや外部の専門家に丸投げすると
「院長は結局他人事なのか」
「また自分たちの仕事が増えるだけ?」
という印象を与えてしまいかねません。
「一緒に考えていくのだ」という
姿勢を示すための宣言として
責任をもってトップ自ら表明しましょう。
<3 チームづくり>
次にワークライフバランス改善のためのチームを作ります。
ポイントは
- ・各職種から最低ひとりをメンバーに加えること
- ・院長先生がチームの一員になること
プロジェクト管理のキモは責任者を決めることですので、
獣医師だけではなく、看護師やトリマーからもメンバーに
加わってもらい、その部門のワークライフバランス改善の
担当者の位置づけを明確にすることが成果につながります。
<4 現状分析>
先に紹介したような分析ツールを使って、
チームメンバー全員で自院の現状を把握します。
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
またチームメンバーで労働環境について
各職種の困っていることを出し合って共有します。
- ・毎日帰りが遅くなって辛い
- ・労働なのか自己の時間なのか曖昧な時間を整理したい
- ・無駄な作業がある
など、生の声を出し合うことが大切です。
もちろん、スタッフ全員にアンケートなどをして
定性的な分析を加えてもいいですが、
そこまで大掛かりなことができなくても構いません。
ここで大切なのは、
- ・自院の労働環境で特に問題となっている点
- ・その問題点に関して取り組めそうなこと
を具体的にして、
それをチームのメンバーで共有することです。
<5 目標設定>
現状分析の結果を踏まえて
これから取り組む目標をたてます。
どんな目標でもいいのですが、
スタッフにとって一番わかりやすい
ワークライフバランスの改善は
「労働時間の減少(=プライベートの時間の増加)」
ですので、
そこに的をしぼって目標を立てると取り組みやすいと思います。
また、現状分析で使った分析ツールの中で
できていなかったことを
できるようにするという目標でも構いません。
- ・雇用契約書(労働条件通知書)を作成する
- ・36協定を締結する
- ・1年に1回の健康診断を導入する など
目標を立てるときには俗にいう
「SMARTの法則」
を意識すると、取り組みやすくなります。
- S pecific ⇒ 具体的で
- M easurable ⇒ 計測可能で
- A greed upon ⇒ 達成可能で
- R ealistic ⇒ 現実的で
- T imely ⇒ 期限が明確
例えば
「2017年1月末までに、急患が無い場合には
獣医師は●時、看護師は●時までに退社することを習慣づける。」
とか
「2017年1月末までに、昼の休憩を1時間確保できるようにする。」
など。
当然病院の現状によって目標は変わります。
たとえば「昼休憩1時間」という例をひとつとっても、
「そんなのもともと確保できてるよ!」という病院もあれば
「そんなの確保できるわけないじゃん!」という病院もあります。
自院に合った目標を立てていただければと思います。
<6 ルール作成と実施>
例があった方がわかりやすいと思うので、
「2017年1月末までに、急患が無い場合には
獣医師は●時、看護師は●時までに退社することを習慣づける。」
という目標を立てたと仮定して話を進めます。
目標ができたら、
そのために何ができるか、
何をすべきかという具体的な行動を
チームで考えて、ルールにします。
たとえば
・夜の入院の処置は業務の合間を見て進め、
●時までには完了させる。
・カンファレンスは●時までに終了させる。
・トリミングは●時までに終了するように予約を調整し
それ以降は清掃業務を行う。
・どうしても残業が必要な場合は、
なんとなく全員が残るというのではなく、
残る人を明確に決め、残りの人は退社する。
・夜のトイレ清掃は、朝行うことにする。
など。
議論の過程では
「そんなの無理だ」
「そんなことをしたら売り上げが下がる」
など様々な意見が出ると思います。
その中で、目標達成のために
トライできそうなこと妥協できそうなことを
チームで見つけていくのがここでの作業となります。
ルールができたら、いよいよ全体に周知し、
実行に移していくことになります。
ここでも各職種のチームメンバーから
伝達させるだけではなく、
ミーティングなどでトップである院長先生から
明確に「お達し」を明確に行った方が
目標に向けて取り組んでいくのだというムードが高まります。
またルールを周知したら
チームメンバーを中心に日々そのルールが
守られているかを確認し、
守られていない場合は注意しあうようにしましょう。
新しいルールを導入し、
守られていないときに注意する
というのはなかなか面倒で骨が折れることです。
しかしここがワークライフバランス改善への正念場です。
チームメンバーには、責任をもって
「ルールが形骸化しないための見張り番」
の役割を果たしてもらいましょう。
<7 評価・改善>
病院全体で一定期間取り組んだら、
チームメンバーで振り返り、成果を確認します。
そのためにも
「2017年1月末までに」といった具合に
期限を明示しておくことが大切なのです。
期限がないとダラダラと取り組んでしまい、
振り返りをしないまま、
なんとなくルールが守られなくなっていく
という尻すぼみなプロジェクトになってしまい、
「そういえば、あれどうなったの?」
「結局何も変わらなかったね」
と、スタッフがかえってマイナスイメージを
抱いてしまうということになりかねません。
必ず、期限を区切って振り返りを行いましょう。
振り返りの中では
- ・できたこと
- ・できなかったこと
- ・できなかった理由
- ・どうすればできるようになるか
などをチームメンバーで確認します。
「カンファを●時までに終えることはほとんどできなかった。
検討する症例数を減らさないと厳しいと思う。」
「トイレ掃除を朝にしたのは問題なくできている。」
「急患時に残業する人がかたよってしまった。」
など各メンバーで意見を出し合いながら、
- ・ルールの変更点
- ・新たに加えるルール
- ・廃止するルール
を決め、
再度期限を決めて、全体周知して実行します。
そしてまた振り返りを行うという流れです。
全体に周知する際には、
振り返りの内容も合わせて伝え、
できていることに関しては
しっかりと褒めることを意識しましょう。
<PDCAサイクル>
ここまでワークライフバランス改善を進めるための
ステップについて書いてきました。
ピンと来た方も多いと思いますが、
これこそがよく耳にする
「PDCAサイクルを回す」
ということです。
ワークライフバランス改善は
このPDCAのサイクルを
いかにスピーディに
たくさん回すことができるかが
成功のカギです。
Plan(計画)⇒Do(実施)
で終わってしまうことが非常に多いので、
Check(評価)⇒Action(改善・見直し)⇒Plan(次の計画)
と進めていけるよう、
院長先生やチームメンバーを中心に
動物病院全体の士気を高め、
一丸となって取り組んでいただければと思います。
次回はワークライフバランスの中でも
「働きがい」という部分に大きな影響を与える
動物病院の評価制度や賃金制度について
書いてみたいと思います。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
<参考リンク>
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
上記で触れたツールです。
労働関係法令のキモがかいつまんで
紹介されているので、ざっと読むだけでも勉強になります。
厚生労働省「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)」
医療機関の勤務環境改善の事例などを参照できます。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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