動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第9回 メンタルヘルスに取り組む方法
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
9回にわたってお届けしてきた
【シリーズ】動物病院のワークライフバランスも
今回が最終回となりました。
最後は、動物病院がスタッフの
メンタルヘルス対策に取り組む際の
具体的な方法やルールの例などを
紹介したいと思います。
メンタル不調対応で大切なのは、
メンタル不調者が発生したときの流れを
きちんと決めておくことです。
「え、そもそもメンタル不調者が出ないように
予防することが大切なんじゃないの?」
と思われる方も多いと思います。
もちろんメンタル不調者が発生しないように
残業時間の短縮化をしたり、
定期的に面談をして悩みを聞いてあげたり、
ということも大切です。
しかし動物病院側がどれだけ手を尽くしたところで
メンタル不調が発生するときは発生します。
例えば仕事の悩みが何もなくても、
家庭の悩みが原因でスタッフがメンタル不調に
なることだってあるのです。
これは動物病院に限らず、
あらゆる企業が抱えているリスクです。
どれだけ「ホワイト」な会社でも
スタッフのメンタル不調のリスクを
ゼロにすることなどできません。
ですから、スタッフのメンタル不調は
いつ発生してもおかしくないリスクだと認識し、
発生した時のために対応方法を決めておくことが
何よりも大切なのです。
<メンタル不調者が発生したとき
のために決めておきたいこと>
ここからは、メンタル不調が発生した際の対応として、
段階別に「決めておくべきこと」を紹介します。
1 メンタル不調になったスタッフを治療につなげる段階
<決めておくべきこと>
(1)誰が初期対応をするか
これは規定等で明示しなくても構いませんが、
対応するのが院長なのか?他の担当者なのか?
はあらかじめ決めておいた方がよいでしょう。
(2)どこの病院にかからせるか
【規定の具体例】
「会社が必要と判断した場合、
会社の指定する医師による診察を
スタッフに命じることができる。」
(3)診断書を提出させる条件
【規定の具体例】
「連続5日以上、病気により欠勤する場合には
その理由を記した主治医による診断書を
提出しなければならない。」
人事トラブルはなんでもそうですが、
「初動が肝心」です。
本人から申告があった場合、
無断欠勤が続いた場合、
見ていて明らかに言動がおかしい場合 など、
スタッフのメンタル不調が発覚するきっかけは様々です。
そんなときに誰が本人から話を聞き、
病院の受診を指示し、
どれくらい休みが続いたら
診断書を提出させるか。
これが動物病院内で決まっていないと、
メンタル不調者が放置されたまま時間が経過し、
症状はどんどん悪化し、職場も浮き足立ち、
「リスク管理」「損失回避」「コンプライアンス」
の観点で、最悪の方向に進んでしまうことになります。
逆に迅速に対応ができれば、
リスクや損失は最小限にとどめられ
きちんと療養して早期に職場復帰できる可能性もあります。
私自身もメンタル不調のスタッフに対応した
ケースは何度もありますが、
渋る本人を説得して病院に通院させ
その後元気に職場復帰してくれたケースもあります。
初動対応に関することは
しっかりと決めておきたいところです。
2 治療開始後から療養、休職までの段階
<決めておくべきこと>
(1)休職の条件
【規定の具体例】
「欠勤が連続・断続を問わずに30日を超えた場合、
または通常の労務が提供できず回復に一定期間を
要すると病院が判断した場合に、休職を命じることがある」
このように、休職の条件を定めておくことで
ダラダラと欠勤している状態を続けることなく、
明確に休職へと移行できるため、本人にとっても、
動物病院側にとっても、対応がクリアになります。
明らかに症状が出ているにもかかわらず、
無理をして働かせ、症状が悪化したり
万一のことがあった場合など、
動物病院側の責任も問われかねない、
ということを忘れないようにしましょう。
3 回復し、復職を検討する段階
<決めておくべきこと>
(1)病状や回復の確認の方法
【規定の具体例】
「会社は復職後の健康配慮のため、
主治医の診断書、会社の指定する医師の診断書
等に基づいて、復職の可否や期日を検討する。」
(2)復職の可否の判断方法
【規定の具体例】
「職場復帰の可否の判断のために、会社は
関係者による復職判定委員会を設置する。
メンバーは院長、副院長、直属の上司
(当事者が獣医師なら獣医師の役職者)とする。」
「復職を検討する際の体調の目安は以下の通りとする
・復職可能である旨の診断書が出ていること
・自覚する体調が普段の8割から9割以上であること
・1日少なくとも6時間以上の勤務に耐えられること
・安全に通勤できること」
何をもって体調を確認し、
誰が何をもって復職を決定するのか等を決めます。
忘れてはいけないのは、
「復職の可否を決めるのは
精神科医ではなく、動物病院(経営者)だ」
ということです。
たとえ復職可能の診断書が出ていても
経営者として復職が難しいと判断することもありえます。
中途半端な状態での復職は、
受け入れる職場にも負担となります。
焦らずしっかりと検討して復職させましょう。
4 復職・復職後の段階
(1)復職に伴う担務変更や給与変更の可能性
【規定の具体例】
「復職する際、事情を考慮し、
職務や担当を変更することがあり、
それにともない勤務時間、給与等を
変更することがある。」
(2)復職後のルール
【規定の具体例】
「復職後、半年程度を目安として、
当事者のスタッフは定期的に医師の面談を受け、
再発の有無と業務負荷が適正であるかの
確認を受け、院長に報告する。」
メンタル不調は極めて再発が多い病気です。
仕事が原因であったとしたら、復職により
再発する可能性も非常に高いです。
そのため例えば、飼主様とのやりとりが大きな
負担になっていたのであれば電話対応は当面
させないなど、できる配慮はしてあげましょう。
(もちろん配慮に限界はありますが)
以上、メンタル不調が発生したときのために
決めておくべきことを紹介しました。
これらはもちろん就業規則等で
明確に定められればベターですが、
そこまでの余裕がないという場合は、
経営者や幹部の中で共有しておくだけでも、
何もないよりはずっとましです。
「できることからやる」という観点を大切にしてください。
<結び―動物病院のワークライフバランス―>
9回にわたって
動物病院のワークライフバランスについて
書いてきました。
動物病院の現場でスタッフの方にお話を伺うと、
多くの人が、動物が好きで若い時からこの仕事を
目指して就職したと言います。
そして「好きじゃないとやってられないですよ」
という言葉も頻繁に耳にします。
その言葉には「それだけしんどいんですよ」という
“自虐”のようなニュアンスも含まれていますが、
それよりもやはり「自分でこの仕事を選んでいるのだ」
という矜持があるからこその言葉のように思えます。
世の中にはたくさんの仕事がありますが
好きなことを仕事にして、
人からも感謝されて
世間や子どもから憧れられ、
誰にでも胸を張れる尊い仕事
というものを探すことはなかなか難しく、
そういう仕事に就けるということは
とても幸福なことだと私は思います。
本来そのように尊くて素敵な仕事である
動物病院のお仕事ですが、
ワークライフバランスが崩れるがゆえに
泣く泣くそのお仕事を離れざるを得ない人が
いるとしたら、それは辛いことです。
以前のブログで触れたような、
女性獣医師の労働力の活用の課題なども
同じ問題ですね。
ワークライフバランスの改善は
一朝一夕ではできませんが、
多くの動物病院従事者が幸せに働けるよう
少しでもできることをしていただければ、
そして私もそのために尽力してまいりたい
と考えています。
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今年も残すところ数時間となりました。
7月に動物病院経営パートナーEn-Jinを起ち上げ
今日まで必死で走ってまいりましたが、
多くの方のご協力・ご支援のおかげで
ここまでやってくることができました。
改めて心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
動物病院経営パートナーEn-Jinは
2017も動物病院の経営サポートに力を尽くしてまいります。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
お仕事柄、年末年始もお忙しい方が多いと思いますが、
どうぞ良いお年をお迎えください。
<おすすめ関連書籍・参考リンク>
◆亀田高志
『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』
著者は企業向けや社会保険労務士等の専門家向けに
メンタルヘルスに関する講演等を行っている方です。
メンタルヘルス対策のポイントや規程の例なども
掲載されており、読みやすい書籍です。
◆電通の事件に関して産業医が述べた記事
ハーバーオンライン
『現役産業医が見た電通事件、3つの問題点――
「残業100時間超えだけが問題ではない」』
◆関西電力事件のニュース
ハフィントンポスト日本版
『【高浜原発】自殺した関電社員を労災認定
審査対応で月200時間残業』
◆2015年から50人以上の職場に義務付けられたストレスチェックについて
厚生労働省『ストレスチェック制度導入マニュアル』
(リンク先からダウンロードも可能です)
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第8回 動物病院がメンタルヘルスに取り組む理由
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<医療業界とメンタルヘルス>
ワークライフバランスについて語るときに
避けて通れないのがメンタルヘルスの話です。
今年も電通や関西電力など
大企業の過労死自殺がニュースとなり、
世間や行政の関心度もますます高まっています。
また2015年12月から、
50名を超える職場における
年に1度の「ストレスチェック」が義務化されました。
(ブログの最後に関連リンクがあります)
そのような社会的関心の高まりもあってか、
先日参加した医療労務コンサルタント研修の中でも
メンタルヘルスに関する話に
多くの時間が割かれていました。
また「メンタルヘルス」というテーマに特化した社労士向けの研修も
随分と頻繁に開催されるようになりました。
そもそも現在の医療業界において
ワークライフバランスが声高に叫ばれるようになったのも、
医師や看護師が過労等で心身を病み、
職場を去ってしまうケースや、
自殺を選んでしまうケースが多く、
それをなんとかしなければならないという
流れに端を発しているということです。
2008年の日本医師会の調査によると
医師の約12人に1人が「抑うつ状態」であり、
医師の約50人に1人が「うつ病」であるという結果がでました。
また
- ・21%が不健康であると回答した
- ・9%が興味の減退がみられた
- ・7%に中途覚醒がみられた
- ・6%にエネルギーレベルの低下の自覚があった
- ・2%に集中力や決断力の低下がみられた
など、一定数の医師がメンタル不調に典型的な症状を
発現していることがわかりました。
もちろんメンタル不調は職場や仕事だけが原因とは限らず、
プライベートの出来事が関係していることもありますが、
特に医師や看護師の場合は、
- ・慢性的な過労と睡眠不足
- ・責任の大きい仕事
- ・患者からのクレームやプレッシャー
などの業務特性からメンタル不調が発生するケースが多く
似たような業務特性を抱える動物病院業界としても、
その事実を決して無視できるものでありません。
ということで今回と次回の2回にわたって
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】の締めくくりとして
動物病院スタッフのメンタルヘルスについて書きたいと思います。
<経営の視点からメンタルヘルス対策を考える>
まずどうして動物病院が
スタッフのメンタルヘルスに取り組む必要があるのか、
ということを経営の視点から整理してみます。
1 「リスク管理」の観点
電通や関西電力の事件を見ていても、
スタッフのメンタル不調は企業にとっての
リスクであることは明らかです。
スタッフのメンタル不調は、
- ・訴訟
- ・労災
- ・自殺
- ・飼主様からの評判の低下
- ・(求職者からの評判が悪くなることによる)求人の困難化
などにつながる可能性がある「労務トラブル」だと認識して、
しっかりと対応、予防する必要があります。
2 「損失回避」の観点
メンタル不調でスタッフが休業・欠勤することによる
- ・労働力の低下やその穴埋めにかかるコスト
- ・メンタル不調で業務にあたったことによるミス
- ・職場の雰囲気の悪化
- ・同僚への影響(メンタル不調は連鎖します)
など…
これらは動物病院にとって「損失」にほかなりません。
このような損失を回避するためにも
メンタル不調を予防する
(もしくは発生したときに適切に対応する)
ことが大切なのです。
3 「コンプライアンス」の観点
スタッフのメンタル不調の原因が職場にあるとすれば、
例えば労働基準監督署が調査に入って
労働環境の改善を指示されるなど
コンプライアンス(法令順守)上の問題にも
発展しかねません。
動物病院の経営の視点から考えたときに
スタッフのメンタルヘルス対策に取り組む理由は
ズバリ以上の3点です。
と、こういう書き方をすると
「メンタルヘルス対策はスタッフのためにすることなのに
経営サイドの話ばかりで随分ドライだなあ」
と感じた方もいらっしゃるでしょう。
それを承知であえてこのような書き方をしたのは、
スタッフのメンタルヘルスに取り組むことは
決してスタッフのためだけではなく、
動物病院(経営サイド)のためでもあるのだということを
ご理解いただきたかったからです。
というのも、
これは私が動物病院経営のサポートの現場でしばしば
痛感していることなのですが、
「スタッフのため」という利他の精神だけでは
多くのケースで壁にぶちあたるときがくるのです。
「スタッフのためにあんなに労働環境を整えたのに、
結局辞められてしまって損をした気分だ…」
「スタッフのためにあんなにお金を使ったのに、
どうして感謝ひとつしてくれないのか…。むなしい…。」
というご経験を過去にされた院長先生も多いと思います。
もちろん「スタッフのために」という気持ちは
美しく大切なことではありますが、
それに対して見返りを求めすぎると、
期待はずれに終わってしまうことが少なくありません。
なぜなら経営者と従業員では絶対的に視点が違うからです。
ということでメンタルヘルス対策について考える際にも
「スタッフのためにやるのだ」というだけではなく、
上述したような「動物病院の経営のために必要なのだ」
という視点を忘れないようにしてください。
それこそが実効性のある対策にするための一番のポイントです。
そしてそれが結果としてスタッフのためになり、
スタッフのワークライフバランス改善につながるのです。
次回は動物病院がメンタルヘルス対策に取り組む際に
決めておくべき規定等を紹介していきたいと思います。
<おすすめ関連書籍・参考リンク>
◆亀田高志
『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』
著者は企業向けや社会保険労務士等の専門家向けに
メンタルヘルスに関する講演等を行っている方です。
メンタルヘルス対策のポイントや規程の例なども
掲載されており、読みやすい書籍です。
◆電通の事件に関して産業医が述べた記事
ハーバーオンライン
『現役産業医が見た電通事件、3つの問題点――
「残業100時間超えだけが問題ではない」』
◆関西電力事件のニュース
ハフィントンポスト日本版
『【高浜原発】自殺した関電社員を労災認定
審査対応で月200時間残業』
◆2015年から50人以上の職場に義務付けられたストレスチェックについて
厚生労働省『ストレスチェック制度導入マニュアル』
(リンク先からダウンロードも可能です)
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第7回 動物病院が知っておきたい補助金・助成金
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日よりお送りしている
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】。
今回は補助金や助成金について書きたいと思います。
先日のブログでも触れた通り
人の医療の世界では国や自治体、医師会、看護協会
などが一体となって医療従事者のワークライフバランスを
改善すべく動き始めています。
そしてその一環として、
病院のワークライフバランスを改善すると
お金がもらえるような制度も整えられてきています。
(例:補助職を導入すると診療報酬が加算されるなど)
一方で動物病院業界では
まだまだそのような動きは見られず、
残念ながら政治的な優先順位からしても
一朝一夕に動物病院のワークライフバランス改善のための
補助金などが制度化されることは現実的でないかもしれません。
では補助金や助成金というものは、
動物病院にとっては無縁なものなのでしょうか?
答えはNOです!
「動物病院のための」というわけではないですが、
企業(特に中小企業)向けの補助金や助成金などは、
国(経産省や厚労省)や自治体などが予算を確保して
毎年たくさん実施しています。
しかしその手続きの煩雑さや情報収集の億劫さなどから、
申請すらしていないという企業が圧倒的に多いのです。
今回はそのような補助金や助成金を
いくつか紹介したいと思います。
関連するサイトのリンクなども紹介しますので、
ぜひ一度見てみてください。
またこのブログでは制度の概要を簡潔に紹介します。
申請等にあたっては必ず管轄する各団体等のHP等
で詳細の内容をご確認ください。
なお、補助金・助成金は国や自治体の事業ですので、
予算等により毎年変更されます。
今回紹介するものの中にはすでに今年度の申込を
締め切っているものもありますが、
次年度以降の参考情報として紹介いたします。
<1.キャリアアップ助成金>
【概要】
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者
といったいわゆる非正規雇用労働者の
企業内のキャリアアップ等を促進するため、
正社員化、人材育成、処遇改善の
取組を実施した事業主に対して助成します。
【支給対象となる取り組み】
・有期契約労働者を正社員に転換した場合
(正社員化コース)
・有期契約労働者に職業訓練等を実施した場合
(人材育成コース)
・有期契約労働者の処遇を改善した場合
(処遇改善コース)
【支給額】
例:
正社員化コースで有期雇用を正規雇用に転換した場合
1人当たり60万円
【管轄部署・申し込み方法】
都道府県労働局・ハローワーク
- (1)キャリアアップ管理者の配置
- (2)キャリアアップ計画の作成
- (3)訓練計画書の作成
- (4)支給申請書の提出
厚生労働省解説ページ
厚生労働省『キャリアアップ助成金パンフレット』
<2.キャリア形成促進助成金>
【概要】
企業内における労働者のキャリア形成の
効果的な促進のため、雇用する労働者に対して、
計画に沿った職業訓練及び制度の導入・適用を行う
事業主等に対して訓練に要した経費と
訓練期間中の賃金の一部を助成するもの。
また、企業内の人材育成に関する制度を
導入・実施した際にも助成をします。
【支給対象となる取り組み】
(1)労働者に対する職業訓練
(2)職業能力を評価する制度の作成
その他様々なコースがあります。
【支給額】
(1)職業訓練の経費の一定割合
(1/2や2/3などコースによって異なる)
(2)職業訓練中の賃金、時給800円
(3)評価制度等導入の場合は50万円
【管轄部署・申し込み方法】
都道府県労働局・ハローワーク
(1)事業内職業能力開発計画及び
これに基づく年間職業能力開発計画
または制度導入・適用計画等を提出
(2)訓練や制度導入を実施
(3)助成金支給申請⇒支給か不支給かが決まる
厚生労働省解説ページ
厚生労働省『キャリア形成促進助成金パンフレット』
<3.職場意識改善助成金(職場環境改善コース)>
(今年度の申込は締め切られています。)
【概要】
年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減、
その他労働時間等の設定の改善に取り組んだ際に
その実施に要した費用の一部を助成するもの。
【対象】
労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が
13日以下又は月間平均所定外労働時間数が
10時間以上であり、
労働時間等の設定の改善に積極的に取り組む
意欲がある中小企業事業主
【支給対象となる取り組み】
- ・労務管理担当者に対する研修
- ・労働者に対する研修、周知・啓発
- ・外部専門家によるコンサルティング
- ・就業規則・労使協定等の作成・変更
- ・労務管理用ソフトウェア等の導入
など
【成果目標】
(1)年次有給休暇の取得促進について、
労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数
を4日以上増加させること。
(2)所定外労働の削減について、
労働者の月間平均所定外労働時間数
を5時間以上削減させること。
【支給額】
上記成果目標の達成状況に応じて、
最大100万円を支給。
【管轄部署・申し込み方法】
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
※平成28年度の申込は終了しました。
次年度以降の実施に要注目です。
厚生労働省解説ページ
<申請にあたってのポイント>
◆専門家や管轄部署に遠慮なく相談を
上記で紹介した各助成金の概要を見て
どのように感じられましたか?
「ややこしそう!」「めんどくさそう!」
と感じたのではないでしょうか?
私も自分で書いておきながらそう思います(笑)
動物病院を含めて、
中小企業がなかなか助成金や補助金を活用できていない
大きな理由のひとつがその手続きの煩雑さです。
不正受給などを防ぐためなので仕方ないのですが、
計画書や添付書類、支給申請書などの提出などを
動物病院の院長先生が全ておひとりでされる
というのは、かなりハードルが高いことだと思います。
なので、各種助成金や補助金の申請にあたっては
税理士・社労士・中小企業診断士などの専門家
の力を借りることを受けることをお勧めしています。
着手金と成功報酬を払えば、書類の作成のサポート
まで手厚くしてくれる専門家もたくさんいます。
(専門家としても助成金は成果がわかりやすいので
サービスとして提供しやすいんですね。)
また各助成金の管轄部署にも遠慮なく問い合わせてください。
労働局などなじみがない方も多いと思いますが、
基本的には管轄部署はせっかく予算をとっているのですから、
「助成金を活用してほしい」という立場ですし、
企業のための施策や窓口は使わなければ損です。
◆「補助金・助成金ありき」にならないよう注意
注意していただきたいのが、
補助金や助成金をもらいたいがために
無理やり人を雇ったり、制度を作ったりすること
のないようにすることです。
補助金・助成金ありきで行った施策は
結果的に失敗したり、形骸化することが多いです。
また計画を実行してから、支給・不支給の判断が
される助成金も多いため、本当にやるつもりがなければ
結果的に「不支給」と判断されてしまい、
申請にかけた手間が無駄になってしまいます。
本当に雇う必要がある人なのか、
本当に導入する必要がある制度なのか、
よく考えて実行していただければと思います。
<おすすめ関連書籍・参考リンク>
『社長! 会社の資金調達に補助金・助成金を活用しませんか! ? 』
小泉 昇
補助金や助成金の紹介のみならず、
申請のポイントなどもコンパクトに書かれています。
支給申請を検討されているなら
一読して損はないと思います。
『平成28年度 中小企業施策ガイドブック』
中小企業庁
中小企業向けの施策が紹介されているガイドブック。
補助金や助成金以外にも載っています。
リンク先からPDFが無料ダウンロードできます。
次回のブログでは
最近話題のメンタルヘルスについて書きます。
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第6回 動物病院の人事評価制度
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
前回まで、ワークライフバランスの重要性や
実際に動物病院でワークライフバランス改善を
進める際のステップ等について書いてきました。
今回は動物病院のワークライフバランスを改善するうえで
重要となる「人事評価制度」について書きたいと思います。
<人事評価制度ってどうして必要なの?>
私自身、前職のサスティナコンサルティング在職時に
人事評価制度作成のプロジェクトを起ち上げ
多くの動物病院の人事評価制度作成に携わらせていただく中で
動物病院における人事評価制度作成のニーズの高まりを
肌で実感してきました。
そもそも人事評価制度ってどうして必要なのでしょうか?
動物病院のスタッフさんのお話を
直接聞く機会が多いのですが、
その中で不満として挙がることが多いのが、
「自分がどう評価されているかよくわからない」
「自分の何が良くて何が悪いのかをちゃんと聞きたい」
という意見です。
「お金や休みがあればそれで満足だ」
というスタッフは実際には少なく、
自分がどう評価されているかを知りたい
と考えるのは人として当然の欲求(承認欲求)
だと思います。
人事評価制度は
それを満たすためのものでもあるのです。
「人事評価制度」と聞くと、
なんだか大袈裟な感じを受ける方もいると思いますし、
なかには、「人に点数をつけるみたいで抵抗がある」と
お考えの方もいると思いますが、
- ・病院の方向性をスタッフに示すためのもの
- ・スタッフに評価をフィードバックするためのもの
- ・主観的になりがちな評価を少しでも客観的にするもの
- ・昇進や昇給を公平に行うためのもの
と、目的を整理すると頭がクリアになると思います。
そして上記の目的を満たすものであれば、
評価項目数が何十項目もあったり、
複雑な昇格体系があるような
「かっこいい」人事評価制度である必要は
まったくありません。
そのような人事評価制度の目的を整理したうえで、
今回のブログでは、
私が過去に作成をお手伝いした実例なども紹介しながら
人事評価制度の導入について考えてみたいと思います。
(実例は個人情報保護等のため一部改変しています)
<人事評価制度ってどんなもの?>
「人事評価制度」というと、
各スタッフに点数をつけるような制度を
思い浮かべる方も多いと思います。
それももちろん人事評価制度の一部なのですが、
人事評価制度はそれだけではありません。
上述の「点数をつける」という部分は、
・「評価制度」
といい、そこに
・「昇進昇格制度」
・「賃金制度」
が加わってそれぞれが相互に関連したものを
「人事評価制度」と呼ぶのが一般的です。
・評価制度⇒スタッフをどんな項目によって評価するか
病院としての方針を示す意味合いもある
・昇進昇格制度⇒役職やその要件(どんな人がその等級になるか)
役職や等級による責任と権限を明確にするために作る
・賃金制度⇒評価や役職に応じてどのように賃金や手当を支払うか
評価や昇進昇格を賃金や手当に反映させる
<評価制度とは>
人事評価制度の中で、最もイメージしやすいのが
この「評価制度(評価項目)」の部分だと思います。
このように各スタッフを評価する項目を設定し、
定期的に評価(点数付け)を実施します。
項目数や項目内容は病院によって様々ですし、
職種ごとに評価項目を変えたり、
点数のウエイトづけを変える場合もあります。
また「仕事の質」とか「効率性」などと
項目名を決めるだけでは
スタッフは具体的にどのように頑張ればいいか
わかりませんので、各項目について
具体的な評価基準を設定することが必要です。
この評価基準ももちろん動物病院によって様々です。
この評価基準をつくる作業は
まさに病院が何を大切にしているか
何をスタッフに求めているかを
明文化する作業にほかなりません。
下記の目的を再認識しながら
院長先生ご自身のお考えを
評価制度に落とし込んでいくことが大切です。
・病院が求めていることをスタッフに明示し、
スタッフが目指す方向を統一する。
・定期的に評価をフィードバックすることで
各スタッフの成長を促し、モチベーションアップにもつなげる。
・評価結果を昇進や昇給と連動させることで
貢献度の高い人が報われる公平な仕組みをつくる。
(「昇給して当たり前」「ボーナスもらえて当たり前」
という意識を排除する)
作成のポイントとしては、難しく考えず、
日々スタッフに口酸っぱく言っていることや
ご自身が獣医師として大切にされていることを
表現すれば納得いくものに近づくと思います。
また評価項目を作るのがゴールではなくて、
それを使って実際にスタッフを評価することが
大切ですので、あまり複雑にしないことを
おすすめしています。
項目数が多すぎたり、ルールが複雑すぎると
結局評価すること自体が面倒になってしまい
使わなくなってしまうということもあるので注意しましょう。
<昇進昇格制度とは>
このように役職や等級ごとに、
要件を定めていくことで昇進昇格制度が完成します。
上図はシンプルな例ですが、
各職名ごとの責任や権限を細かく決定する場合もあります。
評価の高いスタッフが
役職的にも昇格して責任と権限を与えられ
その病院のスタッフとしてのモデルケース
になるということを目的としています。
昇進昇格制度が整えば、
スタッフごとの立場に応じて期待することを
より明確に伝えられますし、
スタッフも将来のビジョンを描きやすくなります。
<賃金制度>
最後は賃金制度です。
賃金制度はどの立場の人がどれくらい賃金をもらえるか、
ということを定めたルールです。
1年ごとになんとなく昇給させている
という動物病院も多いと思いますが、
それだと「昇給して当たり前」という
意識になり、成長が止まってしまいがちです。
下記は賃金制度の一例ですが、
役職が上がるのに連動して賃金が上がる
という仕組みを取っています。
定期昇給・年齢昇給的な要素と、
成果昇給的な要素のバランスをとりながら
作成していくこととなりますが、
プロフェッショナル的要素が強い
動物病院という職場では
成果昇給的な要素を高めに設定した方が
実態にマッチすることが多いです。
もっと複雑な号俸表を作成したりするケースもありますが、
こちらも作成後にちゃんと運用していけるよう
できるだけシンプルなわかりやすい制度にすることを
おすすめしています。
また、人件費として使える金額には限界がありますので
将来の昇給をシミュレーションしながら、
現実的に支払える昇給額を探していくことも大切です。
<「できることから」という姿勢で>
ここまで、評価制度、昇進昇格制度、賃金制度
について解説してきましたが、
これにより、狙っているのは
スタッフの心が以下のように動くことです。
「役職が上がるとこんなに給料が上がるのか。
主任は手当もつくんだ。よし!頑張って上の役職に上がろう」
↓
「主任獣医師に昇格するためには昇格制度の要件
を満たさなければならないな。認定医の勉強も頑張って、
飼主様とのコミュニケーションも大切にしよう。」
↓
「昇格のためには当然評価も高くないといけない。
うちの病院の評価項目は…。なるほど後輩指導も
評価基準なのか。もう少し頑張ってみるか。」
このように病院から何を求められていて、
それに答えるとどういうメリットがあるかということが
明確になることにより、
モチベーションにつながり
より病院が求めるスタッフへと成長してくれる
ことを意図しています。
またこれは「逆転の発想」のお話ですが、
人事評価制度を導入するもう一つのメリットとして
病院の方向性とは合わない人と
上手にお別れをしやすくなる、という点があります。
たとえば、このブログで紹介したような
人事評価制度を運用している動物病院に
「自分はただ動物と触れ合っていたいから
飼主様対応はできるだけしたくない」
という動物看護師がいたとします。
その看護師さんは評価も低くなり、
昇格もできなくなり、結果として
待遇もあまりよくなりません。
そこでその看護師さんが
「この病院は合わない」と判断して
病院を去るのであれば、
それはそれで一つのミスマッチがなくなるわけですので、
お互いにとってよいことだと言っていいと思います。
(もちろんこの看護師さんが仕事と向き合い
飼主様対応を頑張ってくれるようになればベストなのですが)
さらに言えば、採用試験などのときに
自社の人事評価制度を見せて
病院が求めているものを伝えるケースもあります。
その時点で
「自分の考えに合っている」という人は残るでしょうし、
「こんな病院ではやってられない」という人は去るでしょう。
人事評価制度はそのようにミスマッチの解消にも
一役買うのです。
繰り返しになりますが、人事評価制度とは
- ・病院の方向性をスタッフに示すためのもの
- ・スタッフに評価をフィードバックするためのもの
- ・主観的になりがちな評価を少しでも客観的にするもの
- ・昇進や昇給を公平に行うためのもの
です。
まずは簡単なものからでも結構ですし、
最初は評価項目のみで、
昇進昇格制度や賃金制度と関連付けるのは
後回しでも全然構いませんので、
院長先生の考えをしっかりと反映した
人事評価制度を作っていかれることが、
結果としてスタッフのワークライフバランス改善に
つながると思います。
ぜひチャレンジしてみてください。
下記に関連書籍なども紹介いたしますので、ご参照ください。
次回以降のブログでは、
動物病院が知っておきたい補助金や助成金や
メンタルヘルスについても紹介していきます。
<おすすめの関連書籍>
◆山元浩二『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』
人事評価制度の重要性とその導入の方法について
経営者目線でコンパクトにまとめられている書籍。
法律的知識がなくても読みやすいです。
◆有限会社人事・労務『社員がよろこぶ会社のルール・規定集101』
労基法通りのルールだけではなく
たとえば子どもの学校行事のときに休みを取れる規定や
朝礼・終礼のルール作りなど、
書名の通り101個のアイディアが載っています。
すぐに導入できるようなものもありますし、
パラパラと見るだけでも
「こんなルールがある会社もあるんだ」という頭の体操になります。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第5回 PDCAサイクルを回そう
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
前回は動物病院のトップが労働環境の現状を
把握するためのツールを紹介しました。
リンク先から無料でダウンロードできますので、
ぜひご活用ください。
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
今回は「2 方針表明」以降のステップについて
簡単に解説していきたいと思います。
<2 方針表明>
トップが現状を把握したら次は方針表明です。
方針といっても難しく考える必要はありません。
・ワークライフバランスを改善していきたいということ
・スタッフのワークライフバランス改善は
医療の質の改善につながり、
動物や飼主様のためにもなるということ
・そのためにスタッフにも協力をお願いしたいということ
おおまかには以上の内容をスタッフに伝えれば十分です。
ここで大切なのは、方針の細かい内容ではなく、
「トップ自らが表明する」ということです。
これを他のスタッフや外部の専門家に丸投げすると
「院長は結局他人事なのか」
「また自分たちの仕事が増えるだけ?」
という印象を与えてしまいかねません。
「一緒に考えていくのだ」という
姿勢を示すための宣言として
責任をもってトップ自ら表明しましょう。
<3 チームづくり>
次にワークライフバランス改善のためのチームを作ります。
ポイントは
- ・各職種から最低ひとりをメンバーに加えること
- ・院長先生がチームの一員になること
プロジェクト管理のキモは責任者を決めることですので、
獣医師だけではなく、看護師やトリマーからもメンバーに
加わってもらい、その部門のワークライフバランス改善の
担当者の位置づけを明確にすることが成果につながります。
<4 現状分析>
先に紹介したような分析ツールを使って、
チームメンバー全員で自院の現状を把握します。
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
またチームメンバーで労働環境について
各職種の困っていることを出し合って共有します。
- ・毎日帰りが遅くなって辛い
- ・労働なのか自己の時間なのか曖昧な時間を整理したい
- ・無駄な作業がある
など、生の声を出し合うことが大切です。
もちろん、スタッフ全員にアンケートなどをして
定性的な分析を加えてもいいですが、
そこまで大掛かりなことができなくても構いません。
ここで大切なのは、
- ・自院の労働環境で特に問題となっている点
- ・その問題点に関して取り組めそうなこと
を具体的にして、
それをチームのメンバーで共有することです。
<5 目標設定>
現状分析の結果を踏まえて
これから取り組む目標をたてます。
どんな目標でもいいのですが、
スタッフにとって一番わかりやすい
ワークライフバランスの改善は
「労働時間の減少(=プライベートの時間の増加)」
ですので、
そこに的をしぼって目標を立てると取り組みやすいと思います。
また、現状分析で使った分析ツールの中で
できていなかったことを
できるようにするという目標でも構いません。
- ・雇用契約書(労働条件通知書)を作成する
- ・36協定を締結する
- ・1年に1回の健康診断を導入する など
目標を立てるときには俗にいう
「SMARTの法則」
を意識すると、取り組みやすくなります。
- S pecific ⇒ 具体的で
- M easurable ⇒ 計測可能で
- A greed upon ⇒ 達成可能で
- R ealistic ⇒ 現実的で
- T imely ⇒ 期限が明確
例えば
「2017年1月末までに、急患が無い場合には
獣医師は●時、看護師は●時までに退社することを習慣づける。」
とか
「2017年1月末までに、昼の休憩を1時間確保できるようにする。」
など。
当然病院の現状によって目標は変わります。
たとえば「昼休憩1時間」という例をひとつとっても、
「そんなのもともと確保できてるよ!」という病院もあれば
「そんなの確保できるわけないじゃん!」という病院もあります。
自院に合った目標を立てていただければと思います。
<6 ルール作成と実施>
例があった方がわかりやすいと思うので、
「2017年1月末までに、急患が無い場合には
獣医師は●時、看護師は●時までに退社することを習慣づける。」
という目標を立てたと仮定して話を進めます。
目標ができたら、
そのために何ができるか、
何をすべきかという具体的な行動を
チームで考えて、ルールにします。
たとえば
・夜の入院の処置は業務の合間を見て進め、
●時までには完了させる。
・カンファレンスは●時までに終了させる。
・トリミングは●時までに終了するように予約を調整し
それ以降は清掃業務を行う。
・どうしても残業が必要な場合は、
なんとなく全員が残るというのではなく、
残る人を明確に決め、残りの人は退社する。
・夜のトイレ清掃は、朝行うことにする。
など。
議論の過程では
「そんなの無理だ」
「そんなことをしたら売り上げが下がる」
など様々な意見が出ると思います。
その中で、目標達成のために
トライできそうなこと妥協できそうなことを
チームで見つけていくのがここでの作業となります。
ルールができたら、いよいよ全体に周知し、
実行に移していくことになります。
ここでも各職種のチームメンバーから
伝達させるだけではなく、
ミーティングなどでトップである院長先生から
明確に「お達し」を明確に行った方が
目標に向けて取り組んでいくのだというムードが高まります。
またルールを周知したら
チームメンバーを中心に日々そのルールが
守られているかを確認し、
守られていない場合は注意しあうようにしましょう。
新しいルールを導入し、
守られていないときに注意する
というのはなかなか面倒で骨が折れることです。
しかしここがワークライフバランス改善への正念場です。
チームメンバーには、責任をもって
「ルールが形骸化しないための見張り番」
の役割を果たしてもらいましょう。
<7 評価・改善>
病院全体で一定期間取り組んだら、
チームメンバーで振り返り、成果を確認します。
そのためにも
「2017年1月末までに」といった具合に
期限を明示しておくことが大切なのです。
期限がないとダラダラと取り組んでしまい、
振り返りをしないまま、
なんとなくルールが守られなくなっていく
という尻すぼみなプロジェクトになってしまい、
「そういえば、あれどうなったの?」
「結局何も変わらなかったね」
と、スタッフがかえってマイナスイメージを
抱いてしまうということになりかねません。
必ず、期限を区切って振り返りを行いましょう。
振り返りの中では
- ・できたこと
- ・できなかったこと
- ・できなかった理由
- ・どうすればできるようになるか
などをチームメンバーで確認します。
「カンファを●時までに終えることはほとんどできなかった。
検討する症例数を減らさないと厳しいと思う。」
「トイレ掃除を朝にしたのは問題なくできている。」
「急患時に残業する人がかたよってしまった。」
など各メンバーで意見を出し合いながら、
- ・ルールの変更点
- ・新たに加えるルール
- ・廃止するルール
を決め、
再度期限を決めて、全体周知して実行します。
そしてまた振り返りを行うという流れです。
全体に周知する際には、
振り返りの内容も合わせて伝え、
できていることに関しては
しっかりと褒めることを意識しましょう。
<PDCAサイクル>
ここまでワークライフバランス改善を進めるための
ステップについて書いてきました。
ピンと来た方も多いと思いますが、
これこそがよく耳にする
「PDCAサイクルを回す」
ということです。
ワークライフバランス改善は
このPDCAのサイクルを
いかにスピーディに
たくさん回すことができるかが
成功のカギです。
Plan(計画)⇒Do(実施)
で終わってしまうことが非常に多いので、
Check(評価)⇒Action(改善・見直し)⇒Plan(次の計画)
と進めていけるよう、
院長先生やチームメンバーを中心に
動物病院全体の士気を高め、
一丸となって取り組んでいただければと思います。
次回はワークライフバランスの中でも
「働きがい」という部分に大きな影響を与える
動物病院の評価制度や賃金制度について
書いてみたいと思います。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
<参考リンク>
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
上記で触れたツールです。
労働関係法令のキモがかいつまんで
紹介されているので、ざっと読むだけでも勉強になります。
厚生労働省「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)」
医療機関の勤務環境改善の事例などを参照できます。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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