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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第3回 人医療の労務の歴史


  • カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)

<人の医療業界の勤務環境改善の歴史>


前回のブログでは
ワークライフバランスを整えることは
単なるスタッフの待遇改善にとどまらず
スタッフ、飼主様、病院の3者が
WIN-WIN-WINとなる「好循環」に
つながるということを書きました。

一方でワークライフバランスを軽視すると
結果として経営の悪化につながる「悪循環」
が発生するということも書きました。

そしてその「悪循環」とは
人医療の世界がすでに経験した
苦い過去でもあるのです。

 

先日、受講した「医療労務コンサルタント研修」の中では、
人の医療の世界の勤務環境改善の歴史についても学びました。

2000年 を超えたあたりから
人の医療の世界でも過酷な労働環境が常態化して
それが医師や看護師の疲弊につながり、
  • ・離職
  • ・メンタル不調や過労死・自殺
  • ・それらに伴う訴訟
  • ・医療ミス

などが急増した時期がありました。
(「ありました」と過去形で書きましたが、
現在もそれらの問題が全て解消されたわけではありません)

特に平成15年から平成20年の間には
過労死や自殺で亡くなった医療関係者の遺族が
病院を訴え、損害賠償額が7000万円を超えるような
判決が複数出て、大きな社会問題にもなりました。

<参考 医療機関の労働事件判例>

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そのような流れを受けて、平成23年頃から、
国(厚労省)、都道府県、医師会、看護協会などが
本腰を入れて医療現場の勤務環境改善に取り組み、
少しずつ改善してきたという経緯があるのです。

 

このシリーズの第1回のブログでも触れた通り、
動物病院と人医療の業界は
人事労務的にも共通点が非常に多いです。

ということは、人医療の業界がたどった道を
今後動物病院業界もたどる可能性は大いにあるのです。

もちろん 「業界」という大きな話だけではなく、
当事者の病院にとって致命傷にもつながります。

過労死裁判の判例も決して他人事ではありません。
医療事故の訴訟よりも、
スタッフ(場合によってはそのご遺族)
からの訴訟の方が、
動物病院にとっては遥かに大きな
リスクだといって
過言ではないでしょう。


ワークライフバランスを整えることは
スタッフに向けたサービスではなく
自院のリスクヘッジにほかならないのです。

 

<できることからはじめるというスタンス>


ここまで動物病院にとってのワークライフバランス改善の重要性を
「好循環」と「悪循環」の視点から切々と訴えてきましたが、
多くの動物病院の院長先生は私に言われるまでもなく
「そりゃワークライフバランスを整えるに越したことはないよ」
とお考えだと思います。

しかしながら
  • ・情報ギャップ(何をすべきかわからない)
  • ・実行力ギャップ(人事労務に取り組む時間や人手が足りない)

に悩まれているケースが多いのではないでしょうか。

また院長先生からよくお伺いする話として、
身近な弁護士や社労士や行政に相談したところ、
到底実現できないような労働時間の短縮を指示されたり
過度に労働者目線にかたよった待遇改善を指示されたという
話があります。

そんなこともあり
「ワークライフバランス」の重要性はわかりつつも
なかなか着手できていないという院長先生も
多いのではないでしょうか。

 

私がコンサルティングの現場でよくお話しすることは
「できることからやりましょう」ということです。

・就業規則を作るのが難しければ雇用契約書から始めればいい。

・きちんとした評価制度を整えるのが難しければ
 定期的に面談をして院長先生の考えを伝えてあげたり
 悩みを聞いてあげるだけでもいい。

・労働時間をいきなり減らすのが難しければ
 業務のムダをスタッフ全員で探すことから始めてもいい。

気休めに聞こえるかもしれませんが、
スタッフはロボットではなく心のある人間ですので、
労働時間の長短や制度の有無だけではなく、
トップの姿勢や態度次第でモチベーションや帰属意識が
大きく変化するものです。
(ご自身が勤務医だったころを思い起こされると
スタッフの気持ちに少し近づけるかもしれません)

なのでぜひ、ワークライフバランスを難しく考えず、
「できること」をひとつでも探し、
行動に移していただければと思います。

また、私のような動物病院経営のサポートをする立場の者も
法律的にOKかNGかという杓子定規なアドバイスではなく、
その職場に応じた落としどころを見つけることを
肝に銘じていきたいと思います。

次回以降のブログでは
そのための具体的な手順や取組事例などについて
紹介していきたいと思います。

<おすすめの関連書籍>


◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』



法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。

◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚

『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』



社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。

残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。

 

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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念


1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。

2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。

3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。

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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第2回 なぜワークライフバランス改善が必要か


  • カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)

<「ワークライフバランス」という言葉がもつ印象は?>


「ワークライフバランス」という言葉があります。
この言葉を聞いて皆さんはどんな印象を受けますか?

本来、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の
バランスを整えることは素晴らしいことなのですが、
経営者の皆様にとっては少し「耳の痛い」言葉かもしれません。

実は私もそうでした。

 

私は動物病院のコンサルタントになる前の
サラリーマン時代(鉄道会社の人事)を含めて、
経営者側の視点で仕事をすることが多かったため
「ワークライフバランス」と聞くと、
  • ・コンプライアンスを遵守をしなければならない
  • ・従業員の要望に応えなければならない
  • ・職場の不満を解決しければならない

といった「ねばならない」という感情がセットで想起されてしまい、
正直なところ、ワークライフバランスという言葉を
あまりポジティブに捉えられない時期がありました。

動物病院業界に限らず、
「ワークライフバランスを整えましょう」と言う言葉は
経営者にとっては、
ある種の「しんどさ」「わずらわしさ」を伴うことが
少なくないと思います。

そこで、今回はまず、
なぜ動物病院のワークライフバランス改善が必要か
という根本的な話からはじめたいと思います。

 

<ワークライフバランスを整えるのはなんのため?>

1 ワークライフバランスを整える


ワークライフバランスを整えるということは、
たとえばどういうことでしょうか?
  • ・勤務負担(労働時間)を適正化する
  • ・やりがいを感じられるように評価制度を整える
  • ・プライベートとの両立ができるようにする

などが挙げられますね。
これはすなわち「スタッフの待遇改善」です。

 

2 医療やサービスの質の向上


ワークライフバランスを整えると…
  • ・労働時間の適正化によりスタッフが業務により集中するようになりミスが減る
  • ・評価をすることでやりがいをもって働く
  • ・人材が定着し、ノウハウが蓄積され、教育・指導の質が向上する。

と、医療の質の向上につながります。

 

3 飼主様の満足度の向上


医療やサービスの質が向上すると…
  • ・飼主様の信頼を得て、より選ばれる病院になる
  • ・スタッフの定着率が上がり、飼主様とスタッフの関係が深まる

と、飼主様の満足度向上につながります。

 

4.経営の安定化


飼主様の満足度が向上すると…
  • ・売上や利益に良い影響が出る
  • ・新しい人の採用や、さらなる雇用環境の改善にお金をかける余裕ができる

と動物病院の経営自体が安定し、
さらにワークライフバランスを整えるための
余裕が生まれやすくなります。

 

これら「1」~「4」は一方通行ではなく、
下の図のように循環しています。

ワークライフバランスを整える目的は、
この好循環を作ることなのだと意識することが大切なのです。

 

好循環の図

 

「ワークライフバランスを整える」ということを
「スタッフの待遇を改善する」という面のみから見てしまうと、
病院の労働力が足りなくなったり、
人件費が余計にかかったりするという
ネガティブな面ばかりが懸念されてしまいがちです。

が、上の循環図が示すように
ワークライフバランスを整えることは
スタッフのみならず、飼主様のためでもあり
ひいては病院(経営者)のためだと考えると
その重要性が腑に落ちるのではないでしょうか。

 

「そんなにうまいこといくわけないじゃん」

「動物病院の現場がわかってないなー」

というツッコミが聞こえてきそうですね。

 

確かに上記の循環図のように
常にワークライフバランスの効果が理想的に
回るケースばかりではありません。
  • ・待遇改善したのにスタッフがあっさり辞めてしまった
  • ・評価制度を導入したけどスタッフが成長しない
  • ・人件費は増えたけど売上は減った

ということも当然に起こり得ます。

 

また私も多くの動物病院の現場を見てきましたので、
業務の性質上、動物病院でワークライフバランスを整える
というのが容易ではないことは承知しているつもりです。
  • ・病院の営業時間自体が長いので労働時間を短縮するのが難しい
  • ・シフト制を組むほど人件費に余裕はない
  • ・仕事と勉強の境目が曖昧。そして勉強しないと成長できない。
  • ・動物の命をほうっておくわけはいかない(応召義務)

というのが、多くの動物病院の(院長先生の)切なる声だと思います。

しかしそれでもなお、私は
「できることからでいいので
ワークライフバランス改善に取り組みましょう」
というスタンスをとっています。

それは次に述べるような悲惨な事態を避けるためです。

 

<ワークライフバランスを無視するとどうなる?>

1 ワークライフバランスを無視する


動物病院に限らず、
ワークライフバランスを無視すると
スタッフは以下のようになります。
  • ・労働時間に歯止めがかからなくなり心身に支障が生じる
  • ・仕事にやりがいを感じられなくなる
  • ・職場に対する帰属意識が低下する

2.医療やサービスの質の低下


そうすると…
  • ・疲弊した獣医師や看護師がミスをする
  • ・飼主様に対する接遇なども低下する
  • ・人が定着しないのでノウハウが蓄積されない
  • ・たえず新人教育をしているような状態になる

という形で医療の質が低下します。

 

3.飼主様の満足度の低下


医療の質が低下すると当然のことながら…
  • ・飼主様の満足度が低下する
  • ・スタッフと飼主様の関係も深まることがない

という事態につながります。

 

4.経営が不安定に


飼主様の満足度の低下はすなわち
  • ・売上や利益の低下

につながり、経営を直接的に圧迫します。

また人材が定着しないことによって
常に採用・求人・教育のために費用を
かけなくてはならない状態になってしまいます。

当然ワークライフバランス改善のために
お金をかける余裕もなくなります。

 

まさに以下の図のような悪循環、
負のスパイラルができあがってしまうのです。

 

悪循環の図

 

この話に耳が痛いという先生も多いと思いますが
ワークライフバランスの重要性を説明するために
あえて書かせていただきました。

というのも、実は上述した悪循環というのは
人の医療業界が過去経験してきた道に
ほかならないからです。

詳しくは次回のブログで触れていきたいと思います。
引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。

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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念


1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。

2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。

3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。

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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】 第1回 医療労務コンサルタント研修を受講して


  • カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)


今回からは
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】と題して
数回に分けて、動物病院の人事労務、評価制度、メンタルヘルス、
助成金・補助金などについての情報をお伝えしたいと思います。

 

このテーマについて書きたいと思ったきっかけは、
先日、社労士会主催の「医療労務コンサルタント研修」を受講したことです。

 

代表プロフィールにも掲載している通り、
私は社会保険労務士(社労士)の資格を保有しています。

「社労士って何?」という方も多いと思いますが、
簡単に言うと「人事労務の専門家」のことです。

雇用契約、就業規則、評価制度、人事トラブル対応などに
精通しているほか、給与計算や社会保険の実務なども担います。

社労士と顧問契約をしている動物病院も最近は増えてきています。
(私自身は人事・労務に限らず、動物病院の経営全般をサポートしています)

 

そして社労士も獣医師と同じように「社労士会」という業界団体があり、
日々、各種研修や勉強会などを開催しています。

私もそういった研修にしばしば参加していますので、
動物病院を経営していらっしゃる皆様に役立つ情報を
ブログでお届けしていきたいと考えたわけです。

 

<こんな研修に参加してきました!>


今回私が参加してきた研修は「医療労務コンサルタント研修」
11/14,15の2日間にわたって開催され、
100名以上の社労士が参加しました。

医療労務コンサルタント研修の様子
医療労務コンサルタント研修の様子

この研修には、社労士の中でも医療機関の労務に携わっている方や
これから携わりたいと考えている方が多く集まりました。

私は日々社労士としての業務にどっぷりと浸かっているわけではなく、
動物病院の経営サポートのお仕事をする中で社労士としての知識を
活用しているという感じですので、「社労士」として独立されている
生粋の(?)先生方と交流をすることも楽しみに受講しました。

<研修の総括>


結論を述べると、今回の研修は非常に勉強になり、
2日間参加した価値が十分にありました。

・国(厚労省)や医師会や日本看護協会から
従業員の勤務環境改善のための取組進捗報告

・医療機関をクライアントとして活躍されている
社労士の先生方から、医療機関の勤務環境改善の
具体的な手法やスタンスについての話

・参加した社労士同士でケーススタディ

などなど、お世辞抜きに内容の濃い研修だったと思います。

<強く感じた2つのこと>


そしてこの研修全体を通して
私が強く感じたのが以下の2つのこと。

 

1.人医療業界と動物病院業界の人事労務上の共通点は多い!


 

これ、実は私も正直半信半疑だったんです。
人の医療には診療報酬制度というカラクリがあったり、
看護師が国家資格だったり、
病院内に人事部門(事務職)があることが当たり前だったり、
動物医療の世界とは異なる点がたくさんあります。

なので、研修を受講した結果
「やっぱり医療機関と言っても人と動物では全然違うわ。
あんまり参考にならなかったな」
となってしまう可能性も覚悟のうえで、研修に参加しました。

ところが!

参加してみてまず感じたのは
「人の医療の世界と動物病院業界は労務的にも共通点だらけ!」
ということでした。
  • ・慢性的医師不足・看護師不足
  • ・資格職のため離職率が高い(開業とか転職とか気軽にしやすい)
  • ・退職時にもめることがしばしばある
  • ・業務の性質上、労基法の遵守が現実的に困難(応召義務との兼ね合い)
  • ・女性の割合が増えており、女性の労働力の活用が急務
  • ・カンファレンスや学会の準備など業務と自己の時間の境界が曖昧な時間がたくさんある

ざっと思いつくだけでも
人の医療の世界と動物医療の世界の
人事労務にはこれだけの共通点があります。

ということは、
人医療の人事労務から学べることが
たくさんあるということ。

あらためて人医療の世界は
ウォッチし続けなければならないと感じました。

 

2.動物病院業界の人事労務面はまだまだ未整備!


次に、ある程度覚悟していたことではありますが、
研修で人の医療機関の組みについて学べば学ぶほど、
「人医療の世界に比べて、動物病院業界の人事労務面はまだまだ未整備」
だということを痛感させられました。

(1)情報ギャップ

まず痛感したのは人事労務に関する情報ギャップ。

例えば労働関係法令のルールや、人事トラブル時のポイント、
直近の裁判例や、人事労務関連の助成金などなど、、、
ヒトのお医者さんは実によくご存じだなと感じました。
国や業界団体の勉強会や、周辺業者やコンサルタントなどから
入る情報の量が動物病院業界とは雲泥の差だということなのでしょう。

ヒトの医療の世界では、たとえば
「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」とか
「看護師の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」とか
いった資料が、医師会や看護協会から配布されていたりします。

動物病院業界でも、
最近は大きな学会で人事労務のテーマの講演があったり、
動物病院向けに情報発信をされている弁護士や社労士の
先生方も増えてきていますが、
医療の業界と比較すると、
まだまだ「情報が入らない」もしくは
「情報を手に入れるために高いお金がかかる」
業界であることを感じさせられました。

 

(2)実行力ギャップ


次に感じたのは実行力のギャップ。

私が研修中にお話ししたある社労士の先生は
医療機関で事務長としてお勤めで
社内の日々の人事労務管理はもちろんのこと、
経営者の命を受けて、労働時間短縮のプロジェクト
に取り組まれているとのことでした。

そう、ヒトのお医者さんの世界では、
社会保険労務士などの専門家を
自社の人事スタッフとして雇うことが
決して珍しくないのです。

一方で、これは動物病院業界ではまだまだ珍しいことです。

動物病院業界では、その利益構造や事業規模から、
人事部門を独立して設けることが現実的でないケースが多く、
例えばスタッフの評価制度を作成・運用したり、
勤務環境の見直しをして結果をトレースするというような
人事施策が「やりたくてもできない」とお悩みの病院が
少なくありません。

動物病院の院長先生方も
決して人事労務に無関心なわけではなく、これまでも
勤務環境を改善したいとお考えの先生にたくさん出会ってきました。

しかしそれを実行に移すだけの時間や労力が足りない、
という現実が大きなハードルとなっているのです。

私もこのような仕事をしている以上、
動物病院業界と他の業界との
情報ギャップや実行力ギャップを
少しでも埋めるお手伝いができればと
感じずにはいられませんでした。

そしてその目的に合致するのであれば、
私が得た情報は包み隠したり小出しにするのではなく、
会員様へのコンサルティングはもちろんのこと、
ブログや無料相談などでも
極力オープンに発信していければと考えています。

 

ということで次回以降、
「医療労務コンサルタント研修」で学んだことに、
私なりの肉付けや考察を加えながら
数回に分けて、
動物病院の人事労務、評価制度、メンタルヘルス、
助成金・補助金などについてお伝えしたいと思います。

お付き合いいただければ嬉しいです^^

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動物病院経営パートナー En-Jin   企業理念


1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。

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病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。

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飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。

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愛媛県での獣医学部の新設がいよいよ現実的に


  • カテゴリ:動物病院経営 関連ニュース


すでにご存じの方も多いと思いますが、
11月9日、内閣府に設置された諮問会議が
獣医師系養成学部の新設を可能とするよう
関係制度改正を直ちに行うということを決定しました。

 

愛媛県今治市は従来より獣医師系学部の新設を悲願としており、
この決定を受けて2018年4月の開学へ向け誘致を急ぐとのことです


2016.11.10 毎日新聞ニュース

 

獣医学部は現在非常に人気が高いため、
開学が実現すれば獣医学生が全国から集まることになるでしょう。

 

これは果たして動物病院業界にどのような影響を与えるのでしょうか?
獣医師の先生方はこのニュースをどのように受け止められましたか?

 

短期的に見れば、求人がしやすくなるなどのメリットはあるかもしれません。
しかし長期的に見たときには、決してメリットばかりではない気がしています。


 

 

以前このブログの「【シリーズ】動物病院のいま」でも何度も書いた通り、
現在は日本における動物飼育頭数が減り続けているにもかかわらず
獣医師数も動物病院数も増え続けているというのが現状です。

 

それを踏まえてシンプルに考えるならば、
これ以上の獣医学生の増加は動物病院業界の競争激化を助長する、
と考えざるをえないのではないでしょうか。


 

実はこれに対しては日本獣医師会も同様の見解を示しており、
長年にわたって、特区による獣医学部新設には
「反対」の立場をとっています。


日本獣医師会「『特区提案』による大学獣医学部の新設について」

 

弁護士、会計士、歯科医師などは
すでにその過剰問題が社会問題化しているところです。
そして様々なデータを見る限り、
獣医師(特に小動物臨床)の世界においても
供給過多の問題は決して他人事ではない
と思います。

 

今後の獣医学部新設の動き、
そしてそれが動物病院業界に与える影響については、
今後も注視していきたいと思います。
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ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
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病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
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飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
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【シリーズ 動物病院のいま】 第5回 業界動向よりも大切なこと


  • カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ソト向きの課題)


全5回でお送りしている
「【シリーズ】動物病院のいま」。

これまで日本経済の動向、ペット市場の動向、
動物病院や獣医師の動向などを見てきました。

最終回の今回は、
これまで見てきた業界動向を踏まえつつ、
これからの動物病院に求められることを
皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

1.動物病院の業績の「二極化」

これまで4回のブログでは、
繰り返し以下のトレンドに触れてきました。

・人口   ⇒減少傾向
・飼育頭数 ⇒減少傾向
・獣医師数 ⇒増加傾向
・動物病院数⇒増加傾向


このようなトレンド(流れ)が続くと
いったいどのようなことが起こるでしょうか。

単純に考えると、動物病院どうしの競争が激化し、
多くの病院の業績が低下することが予想されます。

しかし、実際には話はそれほど単純ではありません。

確かに近年売り上げが低下している
動物病院が増えています。
また新たに開業する病院は特にその影響を受けていて、
かつてに比べると開業してからの売上の伸び方が
鈍化する傾向にあります。

しかしその一方で、
売上を維持したり、伸ばしている病院も
決して少なくはないのです。


これはいわゆる「二極化」という現象です。
動物病院業界に限らず、近年の国内市場では、
二極化の傾向が見られる業界が増えています。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

業績の二極化の要因として見過ごせないのは
「飼育頭数が減りつつも、ペットの飼い主
ひとりあたりが獣医療に使うお金は増えている」
という事実です。

(詳細は前回のブログをご参照ください)

ペット文化の成熟、ペットの長寿化、
獣医療の高度化などにより、
ペットを飼っている方は、
かつてよりも獣医療にお金をかける傾向があります。
そのため、そのような飼い主が通う動物病院では、
飼育頭数の減少にもかかわらず
売上を維持・向上することができているのです。

この傾向をよく見極めて手を打っていくことこそが、
これからの動物病院の活路となると私は考えています。

2.動物病院の「来院頭数」と「売上」の関係

もう少し詳しく見ていきましょう。

動物病院の「来院頭数」と「売上」の関係は
大きく以下の4通りに大別することができます。

A. 来院頭数「増」、売上「増」

B. 来院頭数「増」、売上「減」

C. 来院頭数「減」、売上「増」

D. 来院頭数「減」、売上「減」

◆来院頭数×売上 マトリクス図
来院頭数×売上

もちろん最近でも、「A」のように
来院頭数、売上ともに伸びている動物病院もありますが、
ペットの飼育頭数が減って、動物病院数が増えている現状では、
「A」の状態を維持することは必然的に困難になります。

そこで、「C」のように
来院頭数が減少する中でも売上を伸ばすために何ができるか
を考えることが大切になってきます。


単純に値上げをするというだけではなく、
自院の強みをどれだけ掘り下げられるか、
飼主様にいかに獣医療に関心をもっていただき
潜在的なニーズに呼びかけていくことができるか などなど。

そのようなことをいかに考え、実行できるかが
飼育頭数減少時代の動物病院にとって
非常に大切なことだと思います。

3.動物病院の「売上」と「利益」の関係

ここでひとつ、別の観点から問題提起をしたいと思います。

果たして、
売上を伸ばすことだけが、
動物病院の成功なのでしょうか?


動物病院の「売上」と「利益(=売上-費用)」の関係も
以下の4通りに大別することができます。

a. 売上「増」、利益「増」

b. 売上「増」、利益「減」

c. 売上「減」、利益「増」

d. 売上「減」、利益「減」

◆売上×利益 マトリクス図
売上×利益

「売上が増えるに越したことはない」と考えがちですが、
売上を伸ばすために費用(仕入れや人件費など)が
かさみ過ぎると、
「b」のように
売上は増えているのに利益は減少する
という状況になってしまいます。
(これは決して珍しいことではありません)

一方で、「c」のように
売上自体は減ったとしても、
上手にコストカットをすることにより
利益率の高い経営をすることも可能です。
(これも珍しいことではありません)

ただがむしゃらに売上を増やそうというのではなく、
自院をどのような動物病院にしていきたいのかをよく考え、
売上と利益の関係を見ていくこともまた、
これからの動物病院運営に不可欠なことだと思います。


 

4.自院の(院長先生の)ゴールは何か?

これまで動物病院業界の動向を見てきたうえで
このようなことを書くのは
少し逆説的かもしれませんが、

業界動向や時代の流れを気にすることよりも
自院の強みや弱み、
そしてその動物病院がある地域のペット文化の成熟度、
人口やペット数の増減、競合病院の特徴などを踏まえたうえで
院長先生がご自身の動物病院をどのようにしていきたいのかを
よく考えられることが、何よりも大切だと私は考えています。


私がこれまでにサポートさせていただいてきた動物病院でも、
方針や目標は実に様々です。

「来院数、売上ともにできるだけ伸ばしていきたい」
「来院数は減ってもいいので、売上は現状を維持したい」
「来院数、売上ともに少しずつ縮小化していきたい」
「売上や利益は度外視してもいいから、
地域貢献や動物愛護に力を入れたい」

これらすべての考え方が“正解”であり
その病院にとっての“ゴール”だと思います。


「【シリーズ】動物病院のいま」と題して
ペット業界、動物病院業界の動向を見てきましたが、
その情報に振り回されるのではなく、
自院やご自身の考え方と向き合っていただくための
ひとつの材料とするのが
ちょうどよいスタンスなのではないかと思います。

そしてこのブログがそのきっかけになるのであれば、
これほど嬉しいことはありません。

————————————————
私は(当社は)、動物病院の運営をサポートする立場として
「これをしておけば大丈夫」と特定の手法を押し付けたり、
自社の考え方やノウハウにとらわれすぎることのないように
気を付けたいと常々考えています。

それは上述した通り、
動物病院の数だけ、院長先生の数だけ、
目指すべきゴールがあると考えているからです。

当然売上を上げるための様々な手法はありますが、
その一方で
「商売的ないやらしさは出したくない」
「うさんくさく見られるのは避けたい」
「近隣の病院や獣医師会でのお付き合いもないがしろにしたくない」
といった院長先生の声も大切にしなければならないと考えています。

また当たり前のことですが、私も含めて
コンサルタントは魔法使いでも予言者でもありません。

私に院長先生や動物病院をサポートできることがあるとすれば、
それは先生の考え方や病院の向かう方向性を整理するお手伝いをし、
そのために必要となることを柔軟にご提案し、
そしてそれを机上で論じるだけではなく
実行にいたるまでの実践的なサポートをすることだと考えています。


軒並み動物病院の業績が伸びていた時代は終わりを迎え、
明確な飼育頭数減少時代に突入しています。
それでもなお、動物を飼うことの普遍的な魅力は存在し続け、
それを支える動物病院も必要とされ続けると私は考えています。

動物病院の進む方向性がますます多様化する中で、
当社も常に学び続け、そして悩み続けることを大切にし、
実践的なサポートをしていければと考えています。

最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。

これからも少しでも皆様の参考になる情報を
お届けしていきたいと思います。

<【シリーズ】動物病院のいま 過去のエントリ>

第1回 「業界動向」との向き合い方を考える

第2回 日本経済のいま

第3回 ペット市場のいま

第4回 獣医師のいま

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動物病院経営パートナー En-Jin
(株式会社エンジン)

<企業理念>
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。

2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。

3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。

<↓お問合せはこちらまで↓>
〒222-0033
神奈川県横浜市港北区新横浜3-7-18-703
TEL:045-478-0261
mail:info@en-jin-mail.com
代表 古屋敷 純
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