動物病院経営パートナーEn-Jin ブログ
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第4回 自院の現状把握
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<前回までのおさらい>
先日からお送りしている
【シリーズ】動物病院のワークライフバランス。
第1回~第3回では、ワークライフバランスの重要性について
人医療の世界の労務の歴史などを見ながら書いてきました。
そして前回のブログの最後では
「できることから」ワークライフバランスに着手してほしい
ということを書きました。
誤解を恐れずにいうならば、
動物病院の実態と労働関係法令とがマッチしない面は
少なからずあると私は考えています。
- ・病院の営業時間自体が長いので労働時間を短縮するのが難しい
- ・シフト制を組むほど人件費に余裕はない
- ・仕事と勉強の境目が曖昧。そして勉強しないと成長できない。
- ・困っている動物をほうっておくわけはいかない(応召義務)
などの現状を踏まえれば、たとえば
「1日8時間超えたらすべて残業!残業代は1.25をかけて…」
「カンファや勉強会もすべて業務!残業代を出しましょう。」
「労働時間を守るため、時間外の来院は追い返してください!」
と杓子定規に考えて、それをすぐに実行に移すことは
少し難しいというのが現実だと思います。
また、人の医療の世界では例えば
「補助職を雇用してスタッフの負担を軽減すれば、
もらえる診療報酬の割合が増える」など、
労働環境の改善のために国をあげて動き出していますが、
残念ながら動物病院にはそのような支援もありませんので、
補助職を雇えばそれはそのまま人件費に跳ね返りますし、
病院存続のために国や自治体が力を貸してくれるわけでもありません。
スタッフのワークライフバランスを整えるために、
病院自体が倒産してしまっては元も子もないですよね。
とはいえ、前回のブログで触れた通り、
スタッフが疲弊しているのを放置すると
人が定着しなくなり、
医療の質が低下して動物と飼主様に迷惑がかかり、
結果として経営もうまくいかなくなります。
従業員から訴えられるということも
この時代、決して他人事ではありません。
なので、ぜひ「できることから」
ワークライフバランスに着手してみましょう。
<ワークライフバランス改善のためのステップ>
さて、
「『できることから着手しよう』と言われても
何から着手していいかわからない!」
という院長先生も多いと思います。
そこでこのブログでは、
スタッフのワークライフバランスを改善するための
ステップの例を紹介したいと思います。
これは実際に人医療の世界で使われている手法ですので
労務上の共通点が多い動物病院でも(というかどの業界でも)
ほぼそのまま使えるものです。
【ワークライフバランス改善のための7ステップ】
- 1 トップが現状を把握する
- 2 方針表明
- 3 チームづくり
- 4 現状分析
- 5 目標設定
- 6 ルール作成と実施
- 7 評価・改善
<1.トップが現状把握をする>
現状把握とは、労働関係法令等の基準を
自院がどれだけ遵守できているかということをはじめ、
労務管理に関して、できていることとできていないことを
把握することです。
実は日本医師会のガイドラインでは
スタッフによるチームを作成して
そのチームで職場の現状を把握すると案内されているのですが、
私は、まずトップである院長先生や幹部社員など限られた人間で
現状を把握されることをお勧めしています。
というのも、現状把握の過程では、
病院の労働環境的に未整備な部分や
場合によっては法律の基準を満たしていない点、
つまりマイナス面が明らかになります。
スタッフも含めて自院の現状を把握することは
もちろんとても大切なことなのですが、
現実問題として、
それまで全く労務等について関心や知識がなかったスタッフに、
急に法律上のルールと自院の状況と照らし合わせる作業をさせてしまうと、
「うちの病院は法律を守っていなかったの!?」
「こんな病院にいて大丈夫か」
「法律通りだと、私の残業代はいくらになるの…」
と不安や不満だけを煽る結果になりがちなのです。
こうなるとワークライフバランスを整えるどころか
病院(院長)とスタッフとの間に
修復不可能な大きな溝ができてしまいます。
それを避けるためにも、
まずは院長先生や幹部社員で現状を把握し、
・どこから着手するか
・一般スタッフにはどのように周知するか
など、しっかりと戦略を練ってから
全体に展開すべきだと私は考えています。
この現状把握の段階で
顧問契約されている税理士・社労士などに
入ってもらってもいいと思います。
ではどうやって現状把握をすればいいのでしょうか。
今回は人医療の世界で使われている
分析ツールをご紹介します。
これは労働環境に関する合計35項目の
チェック項目に回答する形で
自院の労働環境の現状把握をするツールです。
日本医師会が発行している
「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
に掲載されています。
細かい点数づけまでするのが面倒であれば、
まずは「できている」or「できていない」
を把握するだけでも十分です。
このツールはネット上に公開されており、
下記のリンクの4~22ページに解説も含めて掲載されていますので、
ダウンロードや印刷してお使いいただければと思います。
(上記画像のチェックリストは6、7ページにあります)
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
お忙しい院長先生が、
労働関係法令のスミからスミまで学ばれることは
現実的ではありません。
かといって、院内に人事専門の部門を設けたり
社労士などの専門家を雇う余裕はないという
病院も多いと思います。
なので、労働環境についての要点をかいつまんだ
このようなフリーツールをぜひ活用いただきたいと思います。
少し長くなりましたので、
「2 方針表明」以降のステップについては
次回のブログで書きたいと思います。
引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
<参考リンク>
日本医師会「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」
上記で触れたツールです。
労働関係法令のキモがかいつまんで
紹介されているので、ざっと読むだけでも勉強になります。
厚生労働省「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)」
医療機関の勤務環境改善の事例などを参照できます。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第3回 人医療の労務の歴史
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<人の医療業界の勤務環境改善の歴史>
前回のブログでは
ワークライフバランスを整えることは
単なるスタッフの待遇改善にとどまらず
スタッフ、飼主様、病院の3者が
WIN-WIN-WINとなる「好循環」に
つながるということを書きました。
一方でワークライフバランスを軽視すると
結果として経営の悪化につながる「悪循環」
が発生するということも書きました。
そしてその「悪循環」とは
人医療の世界がすでに経験した
苦い過去でもあるのです。
先日、受講した「医療労務コンサルタント研修」の中では、
人の医療の世界の勤務環境改善の歴史についても学びました。
2000年 を超えたあたりから
人の医療の世界でも過酷な労働環境が常態化して
それが医師や看護師の疲弊につながり、
- ・離職
- ・メンタル不調や過労死・自殺
- ・それらに伴う訴訟
- ・医療ミス
などが急増した時期がありました。
(「ありました」と過去形で書きましたが、
現在もそれらの問題が全て解消されたわけではありません)
特に平成15年から平成20年の間には
過労死や自殺で亡くなった医療関係者の遺族が
病院を訴え、損害賠償額が7000万円を超えるような
判決が複数出て、大きな社会問題にもなりました。
<参考 医療機関の労働事件判例>
そのような流れを受けて、平成23年頃から、
国(厚労省)、都道府県、医師会、看護協会などが
本腰を入れて医療現場の勤務環境改善に取り組み、
少しずつ改善してきたという経緯があるのです。
このシリーズの第1回のブログでも触れた通り、
動物病院と人医療の業界は
人事労務的にも共通点が非常に多いです。
ということは、人医療の業界がたどった道を
今後動物病院業界もたどる可能性は大いにあるのです。
もちろん 「業界」という大きな話だけではなく、
当事者の病院にとって致命傷にもつながります。
過労死裁判の判例も決して他人事ではありません。
医療事故の訴訟よりも、
スタッフ(場合によってはそのご遺族)からの訴訟の方が、
動物病院にとっては遥かに大きなリスクだといって
過言ではないでしょう。
ワークライフバランスを整えることは
スタッフに向けたサービスではなく
自院のリスクヘッジにほかならないのです。
<できることからはじめるというスタンス>
ここまで動物病院にとってのワークライフバランス改善の重要性を
「好循環」と「悪循環」の視点から切々と訴えてきましたが、
多くの動物病院の院長先生は私に言われるまでもなく
「そりゃワークライフバランスを整えるに越したことはないよ」
とお考えだと思います。
しかしながら
- ・情報ギャップ(何をすべきかわからない)
- ・実行力ギャップ(人事労務に取り組む時間や人手が足りない)
に悩まれているケースが多いのではないでしょうか。
また院長先生からよくお伺いする話として、
身近な弁護士や社労士や行政に相談したところ、
到底実現できないような労働時間の短縮を指示されたり
過度に労働者目線にかたよった待遇改善を指示されたという
話があります。
そんなこともあり
「ワークライフバランス」の重要性はわかりつつも
なかなか着手できていないという院長先生も
多いのではないでしょうか。
私がコンサルティングの現場でよくお話しすることは
「できることからやりましょう」ということです。
・就業規則を作るのが難しければ雇用契約書から始めればいい。
・きちんとした評価制度を整えるのが難しければ
定期的に面談をして院長先生の考えを伝えてあげたり
悩みを聞いてあげるだけでもいい。
・労働時間をいきなり減らすのが難しければ
業務のムダをスタッフ全員で探すことから始めてもいい。
気休めに聞こえるかもしれませんが、
スタッフはロボットではなく心のある人間ですので、
労働時間の長短や制度の有無だけではなく、
トップの姿勢や態度次第でモチベーションや帰属意識が
大きく変化するものです。
(ご自身が勤務医だったころを思い起こされると
スタッフの気持ちに少し近づけるかもしれません)
なのでぜひ、ワークライフバランスを難しく考えず、
「できること」をひとつでも探し、
行動に移していただければと思います。
また、私のような動物病院経営のサポートをする立場の者も
法律的にOKかNGかという杓子定規なアドバイスではなく、
その職場に応じた落としどころを見つけることを
肝に銘じていきたいと思います。
次回以降のブログでは
そのための具体的な手順や取組事例などについて
紹介していきたいと思います。
<おすすめの関連書籍>
◆井寄奈美『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』
法律の原理原則について解説しながらも、
「人件費を抑えたい」という経営者側の現実にも寄り添っており、
経営者がさくっと読むのに適した書籍だと思います。
著者は社労士の先生です。
◆堀下和紀・穴井隆二・渡邉直貴・兵頭尚
『訴訟リスクを劇的にダウンさせる就業規則の考え方、作り方。』
社労士と弁護士の先生方による共著。
企業が従業員に訴えられ損害賠償などが発生した
いわゆる「負け裁判」の実例を取り上げながら、
その訴訟リスクを防ぐために何ができるかを
解説している書籍です。
残業代の問題、セクハラ・パワハラ、メンタルヘルス、
SNSトラブル、個人情報保護、研修費用、競業避止、解雇など
動物病院でも実際に相談が多いケースも多数収録されています。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】第2回 なぜワークライフバランス改善が必要か
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
<「ワークライフバランス」という言葉がもつ印象は?>
「ワークライフバランス」という言葉があります。
この言葉を聞いて皆さんはどんな印象を受けますか?
本来、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の
バランスを整えることは素晴らしいことなのですが、
経営者の皆様にとっては少し「耳の痛い」言葉かもしれません。
実は私もそうでした。
私は動物病院のコンサルタントになる前の
サラリーマン時代(鉄道会社の人事)を含めて、
経営者側の視点で仕事をすることが多かったため
「ワークライフバランス」と聞くと、
- ・コンプライアンスを遵守をしなければならない
- ・従業員の要望に応えなければならない
- ・職場の不満を解決しければならない
といった「ねばならない」という感情がセットで想起されてしまい、
正直なところ、ワークライフバランスという言葉を
あまりポジティブに捉えられない時期がありました。
動物病院業界に限らず、
「ワークライフバランスを整えましょう」と言う言葉は
経営者にとっては、
ある種の「しんどさ」「わずらわしさ」を伴うことが
少なくないと思います。
そこで、今回はまず、
なぜ動物病院のワークライフバランス改善が必要か
という根本的な話からはじめたいと思います。
<ワークライフバランスを整えるのはなんのため?>
1 ワークライフバランスを整える
ワークライフバランスを整えるということは、
たとえばどういうことでしょうか?
- ・勤務負担(労働時間)を適正化する
- ・やりがいを感じられるように評価制度を整える
- ・プライベートとの両立ができるようにする
などが挙げられますね。
これはすなわち「スタッフの待遇改善」です。
2 医療やサービスの質の向上
ワークライフバランスを整えると…
- ・労働時間の適正化によりスタッフが業務により集中するようになりミスが減る
- ・評価をすることでやりがいをもって働く
- ・人材が定着し、ノウハウが蓄積され、教育・指導の質が向上する。
と、医療の質の向上につながります。
3 飼主様の満足度の向上
医療やサービスの質が向上すると…
- ・飼主様の信頼を得て、より選ばれる病院になる
- ・スタッフの定着率が上がり、飼主様とスタッフの関係が深まる
と、飼主様の満足度向上につながります。
4.経営の安定化
飼主様の満足度が向上すると…
- ・売上や利益に良い影響が出る
- ・新しい人の採用や、さらなる雇用環境の改善にお金をかける余裕ができる
と動物病院の経営自体が安定し、
さらにワークライフバランスを整えるための
余裕が生まれやすくなります。
これら「1」~「4」は一方通行ではなく、
下の図のように循環しています。
ワークライフバランスを整える目的は、
この好循環を作ることなのだと意識することが大切なのです。
「ワークライフバランスを整える」ということを
「スタッフの待遇を改善する」という面のみから見てしまうと、
病院の労働力が足りなくなったり、
人件費が余計にかかったりするという
ネガティブな面ばかりが懸念されてしまいがちです。
が、上の循環図が示すように
ワークライフバランスを整えることは
スタッフのみならず、飼主様のためでもあり
ひいては病院(経営者)のためだと考えると
その重要性が腑に落ちるのではないでしょうか。
「そんなにうまいこといくわけないじゃん」
「動物病院の現場がわかってないなー」
というツッコミが聞こえてきそうですね。
確かに上記の循環図のように
常にワークライフバランスの効果が理想的に
回るケースばかりではありません。
- ・待遇改善したのにスタッフがあっさり辞めてしまった
- ・評価制度を導入したけどスタッフが成長しない
- ・人件費は増えたけど売上は減った
ということも当然に起こり得ます。
また私も多くの動物病院の現場を見てきましたので、
業務の性質上、動物病院でワークライフバランスを整える
というのが容易ではないことは承知しているつもりです。
- ・病院の営業時間自体が長いので労働時間を短縮するのが難しい
- ・シフト制を組むほど人件費に余裕はない
- ・仕事と勉強の境目が曖昧。そして勉強しないと成長できない。
- ・動物の命をほうっておくわけはいかない(応召義務)
というのが、多くの動物病院の(院長先生の)切なる声だと思います。
しかしそれでもなお、私は
「できることからでいいので
ワークライフバランス改善に取り組みましょう」
というスタンスをとっています。
それは次に述べるような悲惨な事態を避けるためです。
<ワークライフバランスを無視するとどうなる?>
1 ワークライフバランスを無視する
動物病院に限らず、
ワークライフバランスを無視すると
スタッフは以下のようになります。
- ・労働時間に歯止めがかからなくなり心身に支障が生じる
- ・仕事にやりがいを感じられなくなる
- ・職場に対する帰属意識が低下する
2.医療やサービスの質の低下
そうすると…
- ・疲弊した獣医師や看護師がミスをする
- ・飼主様に対する接遇なども低下する
- ・人が定着しないのでノウハウが蓄積されない
- ・たえず新人教育をしているような状態になる
という形で医療の質が低下します。
3.飼主様の満足度の低下
医療の質が低下すると当然のことながら…
- ・飼主様の満足度が低下する
- ・スタッフと飼主様の関係も深まることがない
という事態につながります。
4.経営が不安定に
飼主様の満足度の低下はすなわち
- ・売上や利益の低下
につながり、経営を直接的に圧迫します。
また人材が定着しないことによって
常に採用・求人・教育のために費用を
かけなくてはならない状態になってしまいます。
当然ワークライフバランス改善のために
お金をかける余裕もなくなります。
まさに以下の図のような悪循環、
負のスパイラルができあがってしまうのです。
この話に耳が痛いという先生も多いと思いますが
ワークライフバランスの重要性を説明するために
あえて書かせていただきました。
というのも、実は上述した悪循環というのは
人の医療業界が過去経験してきた道に
ほかならないからです。
詳しくは次回のブログで触れていきたいと思います。
引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】 第1回 医療労務コンサルタント研修を受講して
カテゴリ:ブログで動物病院経営セミナー(ウチ向きの課題)
今回からは
【シリーズ 動物病院のワークライフバランス】と題して
数回に分けて、動物病院の人事労務、評価制度、メンタルヘルス、
助成金・補助金などについての情報をお伝えしたいと思います。
このテーマについて書きたいと思ったきっかけは、
先日、社労士会主催の「医療労務コンサルタント研修」を受講したことです。
代表プロフィールにも掲載している通り、
私は社会保険労務士(社労士)の資格を保有しています。
「社労士って何?」という方も多いと思いますが、
簡単に言うと「人事労務の専門家」のことです。
雇用契約、就業規則、評価制度、人事トラブル対応などに
精通しているほか、給与計算や社会保険の実務なども担います。
社労士と顧問契約をしている動物病院も最近は増えてきています。
(私自身は人事・労務に限らず、動物病院の経営全般をサポートしています)
そして社労士も獣医師と同じように「社労士会」という業界団体があり、
日々、各種研修や勉強会などを開催しています。
私もそういった研修にしばしば参加していますので、
動物病院を経営していらっしゃる皆様に役立つ情報を
ブログでお届けしていきたいと考えたわけです。
<こんな研修に参加してきました!>
今回私が参加してきた研修は「医療労務コンサルタント研修」。
11/14,15の2日間にわたって開催され、
100名以上の社労士が参加しました。
医療労務コンサルタント研修の様子
この研修には、社労士の中でも医療機関の労務に携わっている方や
これから携わりたいと考えている方が多く集まりました。
私は日々社労士としての業務にどっぷりと浸かっているわけではなく、
動物病院の経営サポートのお仕事をする中で社労士としての知識を
活用しているという感じですので、「社労士」として独立されている
生粋の(?)先生方と交流をすることも楽しみに受講しました。
<研修の総括>
結論を述べると、今回の研修は非常に勉強になり、
2日間参加した価値が十分にありました。
・国(厚労省)や医師会や日本看護協会から
従業員の勤務環境改善のための取組進捗報告
・医療機関をクライアントとして活躍されている
社労士の先生方から、医療機関の勤務環境改善の
具体的な手法やスタンスについての話
・参加した社労士同士でケーススタディ
などなど、お世辞抜きに内容の濃い研修だったと思います。
<強く感じた2つのこと>
そしてこの研修全体を通して
私が強く感じたのが以下の2つのこと。
1.人医療業界と動物病院業界の人事労務上の共通点は多い!
これ、実は私も正直半信半疑だったんです。
人の医療には診療報酬制度というカラクリがあったり、
看護師が国家資格だったり、
病院内に人事部門(事務職)があることが当たり前だったり、
動物医療の世界とは異なる点がたくさんあります。
なので、研修を受講した結果
「やっぱり医療機関と言っても人と動物では全然違うわ。
あんまり参考にならなかったな」
となってしまう可能性も覚悟のうえで、研修に参加しました。
ところが!
参加してみてまず感じたのは
「人の医療の世界と動物病院業界は労務的にも共通点だらけ!」
ということでした。
- ・慢性的医師不足・看護師不足
- ・資格職のため離職率が高い(開業とか転職とか気軽にしやすい)
- ・退職時にもめることがしばしばある
- ・業務の性質上、労基法の遵守が現実的に困難(応召義務との兼ね合い)
- ・女性の割合が増えており、女性の労働力の活用が急務
- ・カンファレンスや学会の準備など業務と自己の時間の境界が曖昧な時間がたくさんある
ざっと思いつくだけでも
人の医療の世界と動物医療の世界の
人事労務にはこれだけの共通点があります。
ということは、
人医療の人事労務から学べることが
たくさんあるということ。
あらためて人医療の世界は
ウォッチし続けなければならないと感じました。
2.動物病院業界の人事労務面はまだまだ未整備!
次に、ある程度覚悟していたことではありますが、
研修で人の医療機関の組みについて学べば学ぶほど、
「人医療の世界に比べて、動物病院業界の人事労務面はまだまだ未整備」
だということを痛感させられました。
(1)情報ギャップ
まず痛感したのは人事労務に関する情報ギャップ。
例えば労働関係法令のルールや、人事トラブル時のポイント、
直近の裁判例や、人事労務関連の助成金などなど、、、
ヒトのお医者さんは実によくご存じだなと感じました。
国や業界団体の勉強会や、周辺業者やコンサルタントなどから
入る情報の量が動物病院業界とは雲泥の差だということなのでしょう。
ヒトの医療の世界では、たとえば
「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」とか
「看護師の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」とか
いった資料が、医師会や看護協会から配布されていたりします。
動物病院業界でも、
最近は大きな学会で人事労務のテーマの講演があったり、
動物病院向けに情報発信をされている弁護士や社労士の
先生方も増えてきていますが、
人医療の業界と比較すると、
まだまだ「情報が入らない」もしくは
「情報を手に入れるために高いお金がかかる」
業界であることを感じさせられました。
(2)実行力ギャップ
次に感じたのは実行力のギャップ。
私が研修中にお話ししたある社労士の先生は
医療機関で事務長としてお勤めで
社内の日々の人事労務管理はもちろんのこと、
経営者の命を受けて、労働時間短縮のプロジェクト
に取り組まれているとのことでした。
そう、ヒトのお医者さんの世界では、
社会保険労務士などの専門家を
自社の人事スタッフとして雇うことが
決して珍しくないのです。
一方で、これは動物病院業界ではまだまだ珍しいことです。
動物病院業界では、その利益構造や事業規模から、
人事部門を独立して設けることが現実的でないケースが多く、
例えばスタッフの評価制度を作成・運用したり、
勤務環境の見直しをして結果をトレースするというような
人事施策が「やりたくてもできない」とお悩みの病院が
少なくありません。
動物病院の院長先生方も
決して人事労務に無関心なわけではなく、これまでも
勤務環境を改善したいとお考えの先生にたくさん出会ってきました。
しかしそれを実行に移すだけの時間や労力が足りない、
という現実が大きなハードルとなっているのです。
私もこのような仕事をしている以上、
動物病院業界と他の業界との
情報ギャップや実行力ギャップを
少しでも埋めるお手伝いができればと
感じずにはいられませんでした。
そしてその目的に合致するのであれば、
私が得た情報は包み隠したり小出しにするのではなく、
会員様へのコンサルティングはもちろんのこと、
ブログや無料相談などでも
極力オープンに発信していければと考えています。
ということで次回以降、
「医療労務コンサルタント研修」で学んだことに、
私なりの肉付けや考察を加えながら
数回に分けて、
動物病院の人事労務、評価制度、メンタルヘルス、
助成金・補助金などについてお伝えしたいと思います。
お付き合いいただければ嬉しいです^^
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動物病院経営パートナー En-Jin 企業理念
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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愛媛県での獣医学部の新設がいよいよ現実的に
カテゴリ:動物病院経営 関連ニュース
すでにご存じの方も多いと思いますが、
11月9日、内閣府に設置された諮問会議が
獣医師系養成学部の新設を可能とするよう
関係制度改正を直ちに行うということを決定しました。
愛媛県今治市は従来より獣医師系学部の新設を悲願としており、
この決定を受けて2018年4月の開学へ向け誘致を急ぐとのことです。
2016.11.10 毎日新聞ニュース
獣医学部は現在非常に人気が高いため、
開学が実現すれば獣医学生が全国から集まることになるでしょう。
これは果たして動物病院業界にどのような影響を与えるのでしょうか?
獣医師の先生方はこのニュースをどのように受け止められましたか?
短期的に見れば、求人がしやすくなるなどのメリットはあるかもしれません。
しかし長期的に見たときには、決してメリットばかりではない気がしています。
以前このブログの「【シリーズ】動物病院のいま」でも何度も書いた通り、
現在は日本における動物飼育頭数が減り続けているにもかかわらず
獣医師数も動物病院数も増え続けているというのが現状です。
それを踏まえてシンプルに考えるならば、
これ以上の獣医学生の増加は動物病院業界の競争激化を助長する、
と考えざるをえないのではないでしょうか。
実はこれに対しては日本獣医師会も同様の見解を示しており、
長年にわたって、特区による獣医学部新設には
「反対」の立場をとっています。
日本獣医師会「『特区提案』による大学獣医学部の新設について」
弁護士、会計士、歯科医師などは
すでにその過剰問題が社会問題化しているところです。
そして様々なデータを見る限り、
獣医師(特に小動物臨床)の世界においても
供給過多の問題は決して他人事ではないと思います。
今後の獣医学部新設の動き、
そしてそれが動物病院業界に与える影響については、
今後も注視していきたいと思います。
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動物病院経営パートナー En-Jin
<企業理念>
1.院長先生の想いを推進する「エンジン」に
ノウハウや理屈を教えるだけではなく実務を推進。
「やりたいこと」を形にします。
2.動物病院のメンバーが「円陣」を組めるように
病院全体がイキイキと同じ方向に進めるよう、
スタッフマネジメントをサポートします。
3.動物病院に多くの出会いをもたらす「縁人」に
飼主様・スタッフ・外部専門家などとのご縁をつなぐ
架け橋になります。
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